野球に判定決着の概念がなくて良かった

2023試合結果


ヤクルト1-1阪神(延長12回)
野球にボクシングのような判定決着というルールがあれば、おそらく今日は負けゲームとなっていただろう。打線が湿りがちで中々得点できない中で、終盤からは投手陣もピンチの連続だった。9回以降は常にサヨナラ負けのプレッシャーと隣り合わせのゲームとなったのだが、それでも好調のリリーフ陣が阪神打線相手に「1点」を与えなかった。ほぼ防戦一方というようなゲームの中でも負けなかったことを評価してよいゲームとなった。
4月6日の中日戦でも感じたのだが、防戦一方のゲームであっても投手陣が粘れば、どこかで勝つチャンスが生まれてくることは間違いない。おそらくは、元々高津監督がやりたかった野球に近付いてきてはいるのではないだろうか?

ヤクルト先発のルーキー吉村は、これまでオープン戦、公式戦共に隙の無いピッチングを披露してくれていたのだが、今日は立ち上がりからコントロールに苦しみ、特にストレートが上ずる場面が目立った。初回の1アウト満塁のピンチは、何とか連続三振で脱したのだが、3回には、近本、中野に連打を許し、ピンチを招くとノイジーのショートゴロの間に先制点を許してしまった。それでも5回を被安打4、与四死球3の1失点でまとめてみせたのだが、初回から球数が多くなってしまい、5回で91球を要してしまった。調子が悪いなりに球数を要しながらも5回を1失点でまとめた部分に吉村の投手としての総合力の高さを感じることが出来たが、欲を言えば、もう1イニングは投げられる投手になってもらいたいと感じる。まだ公式戦で2試合登板したのみではあるのだが、それくらいのハードルは設定したくなるような投球は見せてくれている。初めての甲子園で独特な雰囲気もあったと思うのだが、それでも崩れなかったことは、アマチュア時代の様々な経験が活きているのではないだろうか?
6回からは、星ー石山ー清水ー木澤ー田口ー小澤ー山本ー大西と延長12回までは、8人の投手でリレーし、ベンチ入りの投手全員を起用するという総力戦で凌ぎ切り、引き分けに持ち込んでみせた。
正直7回に同点に追い付いてからは、石山、清水、木澤と先頭打者に出塁を許してしまい、いつ勝ち越されてしまってもおかしくないような雰囲気だったのだが、ピンチでよく粘ってみせた。延長戦に入って以降も高津監督らしいマネジメントに各選手が応えてみせた。
ビジターゲームで同点という展開でも木澤に回を跨がせず、同点の10回にクローザーの田口を投入したこと、12回は左の中野に対してワンポイントで山本を投入したこと、プレッシャーの掛かる12回のマスクを前の回から代走で出場した古賀に任せたこと、最終的に投手全員を起用したことなどが印象的だった。
延長戦に入った時点で、ヤクルトのブルペンは、田口、大西、小澤、山本の4投手が残っていた。阪神のリリーフ陣の層の厚さを考えると分が悪く感じたし、延長戦が12回まで続く可能性があることを考えると、木澤にもう1イニング投げてもらいたい気持ちになったり、味方が勝ち越し点を奪う、もしくは12回裏まで田口を残しておきたい気持ちにもなると思うのだが、高津監督はそういった戦略を取らなかった。前日に登板し、連投となる木澤に無理をさせず、これまた前日に2イニングを投げている大西を最後まで温存し、出来る限り負担を軽減するように考えながらマネジメントしている様子が伺えた。また12回の攻撃で四球で出塁した中村に代えて古賀を起用したり、おそらくは他の投手に比べれば信頼度の高くない山本を投入したことについては、試合に使いながら選手を育てていこうとする高津監督の姿勢を感じることが出来た。古賀も山本もプレッシャーを感じる場面でしっかり仕事をしてくれたのではないだろうか?特に山本をワンポイントで起用した場面については、山本を挟まずに大西を投入しても何ら問題はなかったと思うし、逆に山本を投入することで投手を全員使い切ってしまうというリスクもあったのだが、高津監督は敢えてワンポイントで山本をマウンドに上げた。昨年後半の久保の起用法にも感じたのだが、今日の時点では、山本はまだ1.5軍クラスの投手という評価でも仕方ない投手なのだが、こういった場面での経験を積んでもらうことで成長を促している部分はあると思う。山本も昨年の久保のようにここから結果を残すことが出来るだろうか?注目してみたい。

打線は、今日も沈黙してしまったのだが、阪神先発才木の出来は素晴らしかった。6日の中日戦での高橋宏もそうだったのだが、これだけのボールを投げられてしまうと攻略するのは難しい。開幕前から才木の状態が良いとの情報は入って来ていたのだが、ここまで良いとは思わなかった。今シーズンはヤクルトの星の復活が話題に上がることが多いのだが、才木はその星と同じような出力で先発投手として長いイニングを投げることができていた。空振りを奪える150キロ超のストレートと縦の変化のコンビネーションは難攻不落だった。その才木に多少疲れが出始めた7回に2アウト1,2塁とチャンスを作るとここで代打に起用された川端が同点のタイムリー2ベースを放ってみせた。川端は昨シーズンからコンディション不良もあり、21年シーズンのような勝負強さが影を潜めており、今シーズンも開幕1軍入りを逃していた。勝負所での代打起用もそれ程なかったと思うのだが、この日は、勝負所での起用に応えてみせた。正直、これまでの川端の打席での内容からすると、この日の才木のボールを捉えることは簡単ではないと感じていたのだが、カウント2-1からの150キロのストレートをものの見事にライト線へ弾き返してみせた。おそらくは、ストレート一本に張っていたと思うのだが、今日の才木のストレートは張っていても捉えることが難しいボールだったはずである。そのボールにアジャストしたことに川端の打撃技術の高さを感じさせてくれた。頼りになる男が帰ってきてくれた。
同点に追い付いた後は、苦しいゲーム展開となったのだが、その中でも11回に先頭の青木が四球で出塁し、代走並木が足でプレッシャーを掛ける中で0アウト3塁という一打勝ち越しのチャンスを作ったのだが、このチャンスで山田、村上、オスナというクリーンアップが並木をホームに迎え入れる打撃が出来なかった。勝てるとしたらこの場面を活かすしかなかったゲーム展開だったため、何とかして欲しかったのだが、これも野球である。次戦以降に期待したい。




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コメント

  1. 超匿名 より:

     このシリーズ、敵地甲子園で攻撃力と言う強みが十分に発揮出来なかった中での、1勝1敗1分の五分だったのはポジティブに捉えています。
     阪神の投手は先発、リリーフ共に去年に続いて良いですね。多くの評論家が優勝候補に挙げるのも無理ありませんね。

    • fiys より:

      超匿名さんへ

      阪神の投手陣は質、量ともに素晴らしいですよね。バランスの良いチームです。
      私も甲子園での1勝1敗1分けはポジティブに捉えています。

  2. sabo より:

    よく引き分けたとポジティブにとらえるべきか。
    11回はノーアウト3塁でクリーンナップが点を取れないのは歯がゆい所です

    投手起用に関してはこれまで通り高津監督はしっかり先を見据えてますね
    そろそろ暖かくなってきたのでリードした展開なら先発にもう少し長く投げさせていくかもしれませんが、その前に点を取らないといけませんね

    • fiys より:

      saboさんへ

      ⑥日の中日戦での0アウト2,3塁、9日の11回の0アウト3塁を活かせていたら…という気持ちにはなってしまいますよね。
      おそらく徐々に先発投手の球数を増やしていくでしょうね。

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