ここまでの池山監督の采配を見ていて、一人の選手のifの物語を想像せずにはいられなくなった。その選手の名前は、廣岡大志である。智弁学園から2015年ドラフトでヤクルトにドラフト2位で指名され、ルーキーイヤーには、DeNA三浦大輔からホームランを放つなど潜在能力の高さを見せ付けてくれていた。当時2軍監督だった宮本賢治氏から「廣岡を育てられなかったら指導者失格。」という言葉を引き出すほど魅力に溢れた選手だった。そんな廣岡にレギュラー獲得のチャンスが訪れたのは、高卒3年目となる2018年シーズンの事だった。前年のヤクルトは、シーズン96敗と低迷してしまい、真中監督から小川監督に監督が変わり、HCには宮本慎也氏が就任することとなった。かつて黄金期を築いた野村ヤクルトの細かい野球を復活させる方向に舵を切り、犠打を多用するなど、オールドスタイルの野球でチームの立て直しを図った時期と重なることとなる。そんな2018年シーズンのオープン戦から廣岡はショートで起用され、開幕スタメンの座を確保してみせた。全てにおいてまだまだ粗削りだった廣岡を開幕戦で7番ショートとして起用したということは、小川監督、宮本HCをはじめとした首脳陣の廣岡への期待の表れ、将来への投資だったように思われる。
読者の皆様にまずは、8年前に書いたブログ記事を見ていただきたい。→「私はショート廣岡で腹を括ることとした | ヤクルトファンの日記」
このシーズンが廣岡の一つの分岐点になったことは間違いないと思っている。廣岡は本来であればその長打力を活かして、打撃でアピールするタイプの選手だったと思われる。しかし、当時のヤクルトは暗黒期に足を突っ込んでいるような状況であり、チーム作り、ゲームマネジメントを見直す時期に差し掛かっていた。廣岡は開幕スタメンに抜擢されたのだが、オープン戦から送りバント、時にはスクイズのサインを送られる場面があった。試合に出るためには、そういった細かいプレーも求められたのである。廣岡は、首脳陣のそんな要求にも応えながら、ショートのレギュラーを何とか死守しようとした。春先には「春の嵐と大乱戦、廣岡5の5、西浦3の3 | ヤクルトファンの日記」、巨人戦で5打数5安打を記録したゲームもあるなど、一気にレギュラーを確保できるのではないか?と感じさせてくれる場面もあった。しかし、当時まだまだ粗削りであり、安定感にも欠けていた廣岡は、チームの歯車として要求されたプレーをこなすことが出来ない場面が目立ち、結局45試合の出場に留まることとなってしまった。このシーズンを境に廣岡本人にも首脳陣にも迷いが生じた部分があったのではないだろうか?先程も記したように、廣岡の一番の魅力はその飛距離を含めた長打力というものにあったと思われる。しかし当時のヤクルトでゲームに出場するためには、バントなどの細かいプレーが要求された。そして廣岡は、2018年当初に関しては、送りバントなども意外と器用にこなしていた(メンタル面の影響もあったのかその後徐々にバントなどのプレーが苦手になっていった印象もあるが…)。いわゆるクリーンアップを張れるような長距離砲で生きていくのか?細かいプレーも出来、一発もあるリードオフマンタイプを目指すのか?下位で意外性のある打撃を活かしながら今後も細かいプレーをこなせる選手を目指すのか?この辺りがはっきりしないまま2018年~2020年までの3シーズンを過ごすと、2021年シーズン開幕前に田口とのトレードで巨人に移籍することとなってしまった。当時このトレードには私自身かなり憤りを感じていた。→「廣岡⇔田口の電撃トレード | ヤクルトファンの日記」
宮本賢治2軍監督が廣岡のルーキーイヤーに発言した「廣岡を育てられなかったら指導者失格。」という言葉は、そのままヤクルトの首脳陣に跳ね返ってくることとなった。池山隆寛というスーパースターが登場して以降、背番号「36」を背負った選手は、住友健人、川端慎吾、川上竜平、廣岡大志、西村瑠伊斗といるのだが、入団時点で最も池山と似た雰囲気があったのは廣岡だったと個人的には思っている。その廣岡がヤクルトで才能を開花できなかったことは、廣岡に関わってきた首脳陣には痛恨の出来事だったのではないだろうか?
廣岡は、その後巨人、オリックスでプレーし、初めて規定打席に到達したのは、プロ入り10年目となる昨シーズンの事だった。ここまでが実際の廣岡の物語である。
ifで語りたいのは、廣岡が現在の「池山ヤクルト」のような環境下で高卒3年目のシーズンを迎えていたとしたら?という物語である。先程私は、「廣岡がヤクルトで才能を開花できなかったことは、廣岡に関わってきた首脳陣には痛恨の出来事だったのではないだろうか?」と書いたのだが、その中の人物の一人が2020年シーズンよりヤクルトの2軍監督を務めていた池山監督である。
今シーズンのヤクルトは、ここまで送りバントをほとんど使わずに若手にも積極的に打って繋ぐことを求めた野球を展開している。池山監督の采配を表す中で象徴的な選手の一人に高卒3年目を迎える鈴木叶を挙げることが出来ると思う。奇しくも廣岡が開幕スタメンを勝ち取った時と同じ高卒3年目の選手である。池山監督は、ここまで鈴木を古賀と併用で起用しているのだが、打順は3番に置いている。古賀に関しては「繋ぎの3番」としての役割が求められていると思うのだが、鈴木に関しては「打撃力活かす」ことが求められているように感じる。送りバントや進塁打というものを求められている様子はなく、とにかく打つことが期待されている。正直今の鈴木の実力では、打って繋ぐということは、実力以上のものを求められているように感じる場面もあり、箸にも棒にもかからないような結果に終わってしまう打席があることも事実である。おそらく鈴木が2018年のヤクルトで高卒3年目の選手としてプレーしていたのであれば、首脳陣から評価されないような打席があるのではないか?と想像することが出来る。しかし、今のヤクルトであれば、鈴木のそういった打席も「OK」と見ているのだと思う。この池山監督の采配や鈴木の姿を見ていると、池山監督の頭の片隅に「廣岡大志」の存在があるのではないか?と想像したくなる自分がいる。廣岡という大器を育てられなかった後悔が池山監督の中にもあるのではないだろうか?もし、今のヤクルトに高卒3年目の廣岡がいたのであれば、池山監督は、廣岡をどう育てたのだろうか?おそらくは、廣岡らしく、強いスイングで長打を求めるようなスタイルで育てたのではないだろうか?身体能力の高さと身体の強さを活かし、伸び伸びとバットを振っている廣岡の姿が具体的に想像出来る。当時の廣岡の粗さを考えると結果が付いてきたかどうかは分からないのだが、こういった環境下でプレーする廣岡を見てみたかったと感じるヤクルトファンは一定数いるのではないだろうか?広角に長打を放てて、スピードもある従来の日本人プレーヤーの枠に収まらないようなスケールの大きな選手。そんな選手に育つ廣岡の姿を見てみたかった。
廣岡に関しては、昨シーズンの規定打席到達をプロ野球生活の2つ目の分岐点にしてもらいたい。高卒野手がプロ入り10年目を超えてから初めて規定打席に到達し、そこからスター街道を歩むというケースは非常に稀なケースであると思われるのだが、廣岡にはそういった道を歩むプレーヤーになってもらいたい。廣岡のプロ野球人生はまだまだこれからである。
その他過去記事はこちらから→「ピストル打線と廣岡大志 | ヤクルトファンの日記」、「廣岡大志 | ヤクルトファンの日記」
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