バントという選択肢

ヤクルト3-2広島

セイバー系の数字が注目されるようになって以降、送りバントやスクイズといったバントを用いた攻撃の企図回数というものは大幅に減って来ているという印象がある。今や高校野球でもスクイズで得点を奪うケースというものはかなり少なくなっている。野球は数字のスポーツ、確率のスポーツなどと呼ばれることがあるが、数字や確率を求めるとバントが決して有効な手段ではないという結論にたどり着くことが多いようである。
今シーズンのヤクルトはオスナ、サンタナを補強し、山田も残留したため、本来であれば打撃重視のスタイルで戦うつもりでいたはずである。しかしコロナ禍における外国人選手の不在、青木、内川の離脱、山田のコンディション不良などが重なり、打って得点を奪う打線ではなくなってしまっている。かなり脆弱なメンバーでの戦いを強いられているのだが、ここ数試合先発投手が試合を作ってくれているため、1点の重要性が増している。私自身現代野球においてバントという選択肢はやはりそれ程有効ではないと考えているファンの一人なのだが、迫力の無い打線のチームが競り勝つためには、「バント」という選択肢も必要になってくることは承知しているつもりである。今日のゲームでは荒木のセーフティスクイズと代打で登場した嶋が決勝点に繋がる送りバントを決めたことが非常に大きな意味を持つゲームとなった。「バント」という戦略にこれ程注目が集まるのは、小川監督、宮本HC時代の2018年シーズンの前半戦以来だろうか?

今日のゲームも先発の高梨が前回のDeNA戦同様危なげないピッチングで序盤の3イニングを無失点で抑えていたのだが、打線が援護することが出来ず、3回までは両チーム無得点の締まったゲームとなっていた。4回裏にヤクルトは村上のタイムリーで先制点を奪うことに成功したのだが、その後高梨が5回に曾澤に同点弾、6回に菊池涼に逆転弾を許し、追いかける展開となってしまう。しかしその裏、中村、村上のヒットで1アウト1,3塁のチャンスを作るとここで今日のゲーム5番で起用された荒木が初球にセーフティスクイズを決め、同点に追い付くことに成功した。私はリアルタイムで観戦していた訳ではないので、分からない部分もあるのだが、この場面でのセーフティスクイズを予感していた人はどれほどいただろうか?1アウト1,3塁、打者荒木という部分だけに着目するとスクイズもあり得るように感じるのだが、相手先発がサウスポーの床田であったからこそ、左対策として5番打者として荒木が起用されていたということまで考えると、荒木のバットに期待するというのがセオリーなのではないだろうか?セオリーでは考えられない場面で行うからこそ成功確率が高まるセーフティスクイズを初球に敢行した首脳陣、そのサインに一発で答えた荒木共々ファインプレーと呼べる場面だったのではないだろうか?
続く7回には、先頭の渡邊がヒットで出ると、代打で登場した嶋が初球にバントを決め、1アウト2塁というチャンスを作ると、山崎にタイムリーが飛び出し、結局この1点が決勝点となった。ロースコアの競り合いのまま終盤にもつれ込んだゲームをどう拾うか?という部分が今のヤクルトのテーマの一つだと思うのだが、投手陣がある程度安定しているからこそ、バントという選択肢を選びやすくなっている部分もあると感じる。その1点を守り抜いたリリーフ陣も見事であり、チームとして噛み合った勝利ということが言えるのではないだろうか?

開幕の阪神との3連戦、続くDeNAとの3連戦を終えた時点では、先発投手が試合を作る姿を想像することがし辛かったのだが、その後の巨人との3連戦、そして現在の広島との2試合に関しては、先発投手が本当によく頑張ってくれている。
今日のゲームも高梨が5回2/3を2失点とある程度の役割は果たしてくれた。2本浴びてしまったホームランはもったいなかったが、試合前半の投球に関しては、DeNA戦同様評価できるものだった。リリーフ陣もプレッシャーが掛かる場面でマクガフ、清水、石山という勝ちパターン3枚がしっかり仕事をこなしてくれた。

投手陣と野手陣の信頼関係が深まりそうなナイスゲームだった。

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コメント

  1. JEF九郎 より:

    なるほど、面白い切り口の記事ですね。リアルタイムで見てましたが、確かに荒木のバントは解説の田尾さん含め、あまり予測されていなかったように感じます。

    我々も仕事のシーンなどでデータを扱う機会が多い方もいらっしゃると思いますが、データどおりに企画作ると、無難だけどあまりヒットは生まれないですよね。だからどうしてもデータの盲点というか、空白域を探って、そして今度は見つけた空白域に対して、肯定的な数値を探ってしまいがち。

    バスケなんかもデータのスポーツと言われていますが、当然相手もデータみて戦術練ってきますから、勝負処では、如何にそれまでの試合の流れや自軍・敵軍の各選手の出来・不出来を見極められるかの、コーチの感覚論的な要素が重要だと言われています。


    これは自論ですが、要はデータも結局は誰がどう扱かい読み解いていくかで結論も結果も変わる国語的要素強いと思うので、高津監督には昨日の結果を踏まえて、それこそ野村さんみたいに数字に振り回されず、うまく使いこなす側に昇華していただければと感じました。

    昨日は選手も首脳陣もナイスファイトでした。

    ※ 山崎、、、ホント昨年ぐらいから変わりましたね!

  2. タラちゃん より:

    荒木のところね。
    里崎チャンネルとデータスタジアムのコラボかな?確か?
    3塁にランナーいるところでただ打つだけか、バント(スクイズ、セーフティースクイズ)などで仕掛けるかで、どちらが得点する確率高いかで、
    バントなどで動いたほうが得点する確率高いとか出てた感じします。
    あの場面、
    床田が左投手で3塁走者の動きがわかり辛い、1,3塁の選手の守備(スローイング)不安。打者がバントの名手の荒木。
    やりやすい場面で、この作戦1度失敗してしまうと警戒されるから一発で決める。これが大事でそこを決めることできる荒木の技術の高さ。最低限の仕事を安定できる。
    そこは大きいですね。

    そして嶋。
    捕手4人体制。本日奥川が登録なんで、誰か外れる可能性も高いが。
    中村が打撃好調でスタメンメインになっており、
    嶋がWBCなど国際経験や日本一の経験者で、修羅場経験しているわけで、
    決めて当たり前のピンチバンターっていう立ち位置での起用は十分ありでしょうね。
    肩がよろしくなく、捕手としては出番はほぼないでしょうが、
    出ずっぱりの中村とはもともと仲が良く、会話したりして、中村の頭脳をリフレッシュしてあげたりして、自分はピンチバンターなどの立ち位置で活躍してもらいたいね。

    昨日は、
    西浦、荒木、渡邊など守備陣のファインプレーの連続で、守り切った良い勝利でしたね。

    せっかくなんで、今日勝って、カード勝ち越ししたいですね。
    明日は試合ないので、総力戦できますしね。

  3. sabo より:

    セーフティスクイズは予想外でしたね
    6回で同点の、ですからね。終盤や勝ち越しならもう少し警戒されたかもしれません
    それと延長戦のあるルールなら選びづらい作戦でもあったと思います
    それにしてもあそこまで完璧に転がすとは……!もう少しで内野安打でした。荒木には良い流れが来てますね

    この試合は渡邊のダイビングキャッチを始め、荒木も西浦もファインプレーがあった。山田へのバウンドがイレギュラーした球も処理出来たりと守備の運がかなり良かったですね。ロースコアの中でも流れは間違いなくスワローズに来ていたので高津采配も選手もしっかり勝利の女神を逃がさなかったナイスゲームでした

    ちなみに私が考える試合を決めた一番大きな場面は
    8回表の清水が牽制で曽根をアウトにしたシーンです
    正直清水の調子はかなり悪そうでしたがあの牽制アウトで広島ナインのがっかり感が伝わりましたし精神的に優位に立てました


    それと話は変わりますが水泳の池江璃花子選手が東京オリンピック出場内定ということで凄すぎますね
    周りも本人もあくまで目標はパリだと思っていたらしいですが超スピード回復ですね
    白血病からこれほど早く回復できてるのは世界記録更新しているようなものでしょう

  4. FIYS より:

    JEF九郎さんへ

    データは重要ですが、最終的な部分はアドリブ力が必要になりますよね。だからこそスポーツは面白いのだと思います。

  5. FIYS より:

    タラちゃんさんへ

    ランナー3塁でのデータの話は中々興味深いですね。今回のセーフティスクイズは本当に見事でしたよね。

    守備陣のファインプレーも印象に残るゲームとなりましたね。

  6. FIYS より:

    saboさんへ

    石山もそうですが、清水もクイックや牽制がしっかり出来るのは大きいですよね。清水の牽制の場面含め守りでのいいプレーが目立ったゲームでしたね。

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