第107回全国高校野球選手権大会で印象に残った選手

高校野球


第107回大会を制したのは、沖縄県代表の沖縄尚学高校だった。左右の2年生投手末吉、新垣有を中心とした守りからリズムを作る野球で日本一に輝いた。難敵揃いのトーナメントとなった中でもきっちり勝ち上がった所にチーム力の高さを感じさせてくれた。
酷暑対策での朝夕二部制、広陵高校のいじめ問題による大会期間中の出場辞退など野球以外の部分でも時代の変化が訪れていることを感じさせる大会となった。長い歴史の中で強烈な光を放つこととなった高校野球の光の部分と影の部分両面が表出する大会となった印象である。
今大会は、末吉、新垣有という2点生投手を2枚を擁した沖縄尚学が優勝に輝いたのだが、2年生の活躍が目立つ大会となった。
毎年プロ注目という目線を中心に印象に残った選手を挙げているのだが、今大会は私自身も気になる2年生選手が多かった。現時点ではこの2年生が目立つという現象がどういった意味を持つのか分からない部分もあるのだが、今後の成長にも期待してみたい。












投手

菰田 陽生(山梨学院)2年
・センバツの時点で大器であることは分かっていたのだが、それから4か月強で身体のキレ、ボールのキレともに増しており、将来日本の中心を担う投手になることを現実的に感じさせてくれた。良い意味で力感のないフォームから手元で伸びるボールを投げ込むことが出来ており、伸びしろもまだまだ無限大である。準決勝で右肘を痛めたということが気になるのだが、190㎝を超える長身でありながら器用さも感じさせてくれる投球は、今後の活躍を期待するなと言われる方が無理である。後1年は高校野球界の中心を担う投手だと思うのだが、高校野球は通過点であることを明確に感じさせてくれる投手である。球速もまだまだ伸びて行きそうである。30歳くらいで全盛期を迎えるような成長曲線を描いてもらいたい投手である。

織田 翔希(横浜)2年
・センバツの際にも名前を挙げさせてもらったのだが、超高校級の投手が揃う横浜高校において、2年生ながら中心を担ってみせた。大会期間中に体調不良になってしまう場面もあったとのことだが、それでも試合を作れてしまう所に、高校年代の中では圧倒的な実力を持った投手であることを感じさせてくれた。現段階での投手としての総合力の高さでは菰田異常だと感じるし、2年次の石垣元(健大高崎)と比べても全く劣っていないと思う。高卒即プロの可能性が高い投手らしい投手である。

石垣 元気(健大高崎)
・今夏は長いイニングは投げられなかったが、短いイニングで出力を上げて投げる姿は圧巻だった。おそらくタイブレークであっても相手チームは得点を奪うことに苦労することになったはずである(実際に群馬県大会の決勝でのタイブレーク時の投球は見事でしたしね。)。コンディション面で不安な部分はあるのだが、プロ志望とのことでドラフト1位の可能性もある本格派右腕である。変化球の精度やフィールディングなどもそつなくこなせる投手だけに、コンディションが整うようであれば早い段階でプロの1軍で投げていても驚かない投手である。

末吉 良丞(沖縄尚学)2年
・昨秋の時点で右の織田(横浜)、左の末吉と呼ばれることもあった逸材が新垣有との二枚看板でこの夏の頂点に輝いてみせた。厳しい組み合わせになった中で投球数も自然と増えてしまい、準決勝、決勝に関しては、身体の疲労も伺えたのだが、それでも何とかしてしまう投球スキルを持ったサウスポーである。将来像としては、私は現中日の金丸のような安定感のあるサウスポーに育ってもらいたいと思っている。U-18ワールドカップの代表にも選出されたということでどうしても勤続疲労という部分は気になってしまうのだが、菰田や織田、同僚の新垣有とともに世代を引っ張ってもらいたい投手である。

桑山 晄太朗(津田学園)
・桑山に関しては、上半身の柔らかさ、肩甲骨周りの可動域の広さを感じさせてくれるサウスポーである。現オリックス田嶋の佐野日大高校時代を彷彿とさせてくれた。まだまだ線が細く、スタミナ面という部分では課題はあると思うのだが、今後順調に身体作りが進めば将来はプロ入りが視野に入ってくるだけの能力があると感じる。しなやかな腕の振りは、得難い才能である。

高部 陸(聖隷クリストファー)2年
・打者を差し込むストレートのキレは見事であった。決して大柄な投手ではないのだが、スピン量たっぷりに感じるストレートはそれだけで魅力的である。カット、スライダーの精度も素晴らしく、1年後どこまで成長するか楽しみな投手である。歴代の似たタイプである高井(東北)、島袋(興南)、松井(桐光学園)と比べると空振りを奪える変化球という部分でまだ及んでいないかな?とも感じるのだが、実際にはどうだろうか?右打者のインコースを突くクロスファイヤーは美しい軌道である。

野手

阿部 葉太(横浜)外野手
・世代№1外野手、否世代№1野手という評価で良いのではないだろうか?センバツ時点で「例年出てくる同タイプの好選手に比べても一段階高い評価をして良い選手のように感じる。」と書かせてもらったのだが、今夏のプレーを見て、やはりそれだけの評価をして良い選手だと感じた。大学進学予定とのことで、大学で腕を磨くことになるのだが、個人的には高卒即プロで見てみたかった選手である。強豪横浜高校を引っ張り続けたリーダーシップ含めて何拍子も揃った好選手である。

奥村 頼人(横浜)外野手兼投手
・センバツ時点では印象に残った投手として名前を挙げたのだが、今夏は神奈川県大会での複数のホームラン含め、打者奥村頼人を存分にアピールしてくれた。ボールの角度の付け方が上手く、長距離砲としてもアベレージヒッターとしても才能を感じさせてくれた。投手としては今夏は後輩の織田にマウンドを譲る場面が多かったのだが、元々は横浜高校産のサウスポーらしい総合力の高さを持った投手であるため、投手としてやっていくのか打者としてやっていくの悩ましい選手である。個人的には今日の段階では打者奥村頼を見てみたいのだが、本人はどのような選択をするだろうか?

田西 称(小松大谷)内野手
・開幕ゲームで好投手森下(創成館)に抑え込まれてしまったのだが、打席での雰囲気、ボールの見送り方、スイングスピードの速さと能力の高さを十分に見せてくれたのではないだろうか?阿部葉同様、大学進学ということで個人的には少し残念な気持ちもある。スラッガーとしてNPBで活躍できるだけのポテンシャルはあるように感じるため、是非大学野球で圧倒的なスタッツを残した中で4年後のドラ1を具体的な目標として定めてもらいたい選手である。スイングスピード、打球スピード共に超高校級である。

宜野座 恵夢(沖縄尚学)捕手
・沖縄県の高校の捕手でプロで活躍した選手は意外と多くない(筆頭は沖縄尚学OBの嶺井ですかね?)印象なのだが、宜野座に関しては、捕手としてのゲームメイク能力に優れているように感じた。末吉、新垣有という2年生投手をしっかりリードし、打撃面でも大事な場面で集中力の高さを見せてくれた。身体に恵まれた選手ではなく、現段階では簡単に「プロ」とは言えないかもしれないが、上のカテゴリーでも是非捕手としてチームの中心を担ってもらいたいと感じる選手である。沖縄尚学の日本一は、この宜野座の存在が大きかったのではないだろうか?

忙しい毎日を送る中で、中々高校野球をテレビ観戦できる状況になかったのだが、上記の選手たちは印象に残った。今大会で活躍した2年生の選手達が1年後にどんな選手に成長しているのか楽しみにしたいと思う。




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