井上VSフルトン

ボクシング


井上尚弥が新階級でも最強証明 王者フルトン8回TKOで世界ベルト2本獲得し4階級制覇(日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース




詳細は上記の日刊スポーツの記事の通りである。バンタム級で4団体統一王者となった井上は、スーパーバンタム級でも変わらぬ強さを見せてくれた。階級を上げて即2団体王者であるフルトンと戦うということで、どんな戦いになるのか非常に興味深かったのだが、最終的には井上のモンスターぶりを証明するボクシングとなった。

試合前に個人的に考えていたポイントは、①階級の壁はあるか?②井上のコンディション(特に拳の状態)はどうか?という2点だった。
①については、フルトンが井上のパンチを受けてどう感じるか?逆に井上がフルトンのパンチを受けてどう感じるか?という部分とリーチ差を含めた体格差の影響についてである。
戦前の識者の予想の中で、1階級上のフルトンのボクシングを崩すのは、井上であっても難しいのでは?という予想もあったのだが、これまでの井上のボクシングを見ていると、いくらフルトンがボクシングIQが高く、テクニシャンだとしても井上が12ラウンド完封されて、判定負けを喫する姿はどうしても想像できなかった。私の中で井上が負けるとすれば、階級の壁によりパンチを効かされてしまってのKO負け以外はあり得ないと思っていた。だからこそ、両者が実際に手を合わせてみてどういった肌感覚を覚えるのか?という部分には注目していた。
②については、ハードパンチャーの宿命でもあるのだが、井上もこれまで何度か拳を負傷しており、今回は、本来5月に対戦が予定されていた試合が2か月延期になった経過があったため、実際本来のパンチが打てるのか?という部分もポイントになると感じていた。もし拳の状態が良くないということであれば、井上であっても非常に厳しい戦いを強いられる可能性があると感じていた(逆にコンディションさえ作れていれば、中々負ける姿が想像できないということでもあるが…)。

そして今日のゴングを迎えたのだが、1,2ラウンド目は、完全に井上が主導権を握っていた。序盤からフルトンに対してプレッシャーを掛け、フルトンを下がらせることが出来ていた。リーチ差がある中で不安視されていたジャブの差し合いという部分についても、井上がしっかり主導権を握っているように見えた。そうそうたる解説陣が、「フルトンは井上のパンチ力に驚いている。」という主旨の発言をしていたことから、いつも通り、ここから井上がフィニッシュに向けて組み立てていく展開になると感じていた。しかし今日のフルトン戦は、そこまで事は簡単には運ばなかった。
フルトンは、3ラウンドから前重心に構え、リズムを変えてきた。この辺りがボクシングIQの高さが評価されるボクサーの真骨頂ということになるのだろう。井上のパンチを警戒しつつも、自身も前に出ながらパンチを放つ場面が目立ち始め、徐々にではあるのだが、井上ペースのゲーム展開が変わりつつあることを感じさせてくれた。7回には、右をクリーンヒットする場面もあり、井上も多少なりとも効かされた場面があったように感じられた。クリーンヒットを貰った以降、すぐに井上がプレッシャーを掛け直したのだが、その姿が逆にこの試合初めてのピンチを迎えていることを示しているようだった。多少焦りも出始めているのでは?などということも私の頭の中ではよぎったのだが、それでも「井上は井上である。」ということを続く8回に見せ付けられることとなった。
先程書いた通り、7回にフルトンがこの試合初めて主導権を握りかけたため、8回は、これまで以上に緊張感を持って観戦していたのだが、ジャブで距離を掴み、必殺の右ストレートを打ち抜いたのは井上だった。フルトンの顔面にハードヒットし、ぐらつかすと、すかさず左のフックも入れ、フルトンからこの試合初のダウンを奪ってみせた。フルトンも一度は立ち上がったのだが、直後に井上がパンチをまとめ、そのままTKO勝利となった。

井上が最も苦戦した世界戦と言えば、やはり「井上VSドネアⅠ」だと思うのだが、それ以外の世界戦ということで言えば、今日の試合ということになるのではないだろうか?フルトンは、噂通りのテクニカルでボクシングIQの高いチャンピオンらしいチャンピオンだった。もし解説席に並んだ元世界王者の面々がコメントしていたように立ち上がりに井上のパンチにビビるようなことがあったとすれば、その恐怖心を理解しながらも、3ラウンド以降に自身で工夫してリズムを変えにかかったと言うことが出来る。これはボクシング技術の高さだけでは、出来ない芸当だと思っている。井上がそうであるようにフルトンも最悪の事態を想定した中でリングに上がり、井上と向き合っていたのではないだろうか?決して井上のことをなめてかからず、様々な展開を想定していたからこそ、試合中にスタイルを変更することが出来たのではないだろうか?クレバーさとメンタルの強さも感じることが出来た。強いチャンピオンだったと思う。

このブログでは何度か書かせてもらっているのだが、井上を見ていると「ああ播磨灘」という大相撲を描いた漫画を重ねてしまうことがある。破格の強さを持つ絶対王者井上に様々なタイプの相手が戦いを挑むのだが、井上はその挑戦をことごとく退けることに成功している。今回は初のアフリカ系アメリカ人フルトンの独特の身のこなしとスピードにも対処したため、やはりテクニックで12ラウンドを逃げ切るような相手であれば、井上が負ける姿は想像できない(フルトンはおそらくこの階級では№1のテクニシャンだと思う。)。やはり怖いのは、ドネア同様ハードパンチを持ったボクサーということになるのだと思う。
次戦は、WBAとIBFの世界王者であるタパレスと戦う流れになりそうなのだが、個人的にはアフマダリエフの方がより興味深い相手だったため、タパレスがアフマダリエフを破ったのは意外だった。タパレス戦に関しては、きっちりクリアしてもらいたい試合になりそうである。

何はともあれ、今日も世界最高峰である井上のボクシングが見れたことに感謝したい。




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