すでに報道はなされていたのだが、28日高津監督の今季限りでの退任が発表された。2020年~2025年までの6シーズンに渡って指揮を執ったのだが、浮き沈みの激しい6シーズンとなった。6位→1位(日本一)→1位→5位→5位→6位(9月28日時点)という成績が並んでいる。
高津監督ヤクルトの監督に就任した際に私はこのような記事を書いている。→「高津新監督 | ヤクルトファンの日記」
最下位に沈むチームの監督を任されたのだが、当時のヤクルトには若手が伸びてくる雰囲気があり、2軍監督からの昇格となった高津監督に期待する記事となっている。しかし、コロナ禍というイレギュラーな時代に襲われた2020年シーズンは最下位に終わり、個人的には「このまま暗黒時代が到来してしまうのではないか?」と不安を感じることもあった。実際に2021年シーズンの開幕シリーズで躓いた時には、暗黒時代の訪れを覚悟した。
しかし、高津監督は、ブレないマネジメントと采配でチームを立て直し、2021年シーズンに混戦となったペナントレースを制し、勢いそのままに日本一に登りつめると、2022年シーズンも前半から大逃げし、チーム内のコロナ禍による失速も経験しながらもリーグ2連覇を達成してみせた。この2021年シーズン、2022年シーズンにおける高津監督の手綱さばきは見事なものがあった。
就任初年度のブログ記事でも書いているのが、高津監督にはチームマネジメントを行う上でいくつかのはっきりとした特徴があったと感じている。→「高津カラー | ヤクルトファンの日記」
①選手の体調管理、②積極的な機動力の活用、③選手へメッセージを送るような起用法と采配、④若手の抜擢、私は、この4点を2020年シーズンのシーズン22試合目の時点でブログに記している。チーム状態の変化もあり、②の積極的な機動力の活用については、仕掛けきれない場面もここ1,2年目立ったのだが、基本的には上記4点に関して、高津監督はブレることなく、6年間に渡って継続してきたように感じる。高津監督がチームのリーダーとして、しっかり「色」を付けてくれたことは、ありがたいことだったのではないだろうか?
私が特に驚いたのは、選手の体調管理という部分だった。当時はヤクルトだけでなく、NPBの多くの球団がリリーフ投手の酷使という部分が課題となっていたのだが、高津監督はこの部分にメスを入れ、勝ちパターンの投手に頼るだけのリリーフ運用からの脱却を図った。正直2020年シーズンを見ていて、あまりにも淡々と負けてしまうゲームも目立ち、「このマネジメントで大丈夫なのか?」と感じることもあったが、各選手がコンディションを整えることで実力を発揮できる環境を作り、2021年、2022年の連覇に繋げてみせた。起用される投手も数も増える中で、多くの若手投手の成長にも繋がったのではないだろうか?
そしてこの体調管理に関しては、投手だけに留まらず、野手に関しても村上や長岡といった若手の主力以外には、ある程度の休養日を設けることでコンディショニングを整えることを重視する姿が見られた。個人的には、出来るだけレギュラーメンバーを固定して戦った方が強いチームが作れると感じていたのだが、ある程度のレギュラーメンバーは固定しながらも、他の選手にもチャンスを与える采配で結果を残したことには驚きも感じたものである。
惜しむらくは、この選手の体調管理を重視したマネジメントでも、リーグ2連覇を達成した後は、投手陣にも野手陣にもコンディション不良による離脱が続発してしまったことである。特に今シーズンに関しては、主力の長期離脱が目立ってしまい、正直開幕直後から他球団と勝負出来るようなチーム状態ではなかった。私達ファンが目に見える部分では、間違いなく選手の体調管理を徹底しているように見えたのだが、それでもコンディション不良による離脱を防げなかったことは、今後のヤクルト球団としての大きな課題の一つである。
そして③で挙げさせてもらった「選手へメッセージを送るような起用法と采配」という部分については、現役時代から高津監督を見ていたファンとして最も期待していた部分であった。高津監督と言えば現役時代から頭の回転の速さが目立っており、人の心を掴む話術に優れていた。「言葉の力」を感じることが出来るアスリートの一人だったのだが、監督に就任して以降もその姿を見ることが出来たことは、幸せな事だった。監督という立場上、報道陣に出すコメント、選手や首脳陣といった関係者に直接伝えるコメントでは、間違いなく違いはあると思うのだが、おそらくはその両面で上手くコメントを使い分け、選手、首脳陣とコミュニケーションを図っていたのではないだろうか?私達が追えるのはあくまでも表に出てくる報道陣向けのコメントのみなのだが、低迷していても時折ユーモアを交えた受け答えも見せてくれていたし、チームの雰囲気が大きく崩れているようには感じなかった。90年代のヤクルトはとにかく明るい球団だった。その華やかな雰囲気がファンを増やした部分もあったと思うのだが、高津監督はその頃の雰囲気を今現在のチームにも吹き込んでくれた。長谷川晶一氏とのインタビューでの発言などは、時にチームの裏側や高津監督自身の心境まで語ってくれており、非常に興味深いものだった。現役の監督がこのようなインタビューにきっちり答えることは、おそらく難しいことだと想像する。そういったインタビューを受けることが出来るのも高津監督が「言葉」を大切にしている人物だからこそなのではないだろか?
2021年シーズン最終盤の試合前ミーティングで発せられた「絶対大丈夫」という言葉は、あまりにも有名なのだが、振り返ってみると高津監督は、選手へメッセージを送るだけでなく、私達ファンに対しても常に意識してメッセージを送ってくれていたように思う。ファンのことも「チームスワローズ」の一員として捉えてくれたことが、私にはとても嬉しかった。
2025年シーズンを最後に村上がチームを離れることも濃厚となる中で、正直来シーズン以降に向けてのチーム作りが出来たのか?という部分については「?」が残ることとなる。来シーズン以降を任される監督は、2018年から監督に復帰した小川監督のような「火中の栗を拾う」役割が待っているのだが、それでも高津監督とともに歩んだこの6年間は、ヤクルトスワローズの球団史にしっかりと刻まれることとなる。2021年のリーグ優勝と日本一、2022年のリーグ連覇は高津監督無くしてはあり得なかったものだと思っている。
6年間、高津監督を率いるヤクルトスワローズを応援できたこと自体、幸せな事だった。おそらく高津監督は、今日のゲーム後、シーズン最終戦後に選手や我々ファンに最後のメッセージを伝えてくれるはずである。そのメッセージもしっかり受け取りたいと思っている。
6年間という長きに渡って監督という激務をこなしてくれたことに感謝しかない。本当にありがとうございました。
P.S 高津監督がヤクルトの監督として指揮を執る直前に野村克也氏の訃報が飛び込んで来たのですよね。高津監督が人目もはばからず号泣したことを覚えています。もし野村克也氏が高津監督の采配を見ていたら、どんな言葉を掛けていたのだろう?おそらく褒めるというよりは、色々とぼやいてばかりだったとは思うのだが、2021年のリーグ優勝、日本一については、褒めるような言葉も発してくれたのではないだろうか?
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コメント
野村監督時代以来のリーグ連覇を味合わせてくれたので、大いに感謝しています。一方で故障者問題が克服できず、球団初の三連覇や野村監督時代と違って黄金時代を作れなかったのは残念でした。この点は監督の責任と言うより、球団全体の問題でしょうね。
6年なので長期政権と言えますね。まだ若いしもう一度ヤクルトのユニフォーム(もしくはフロント入り?)を着る機会があると予想します。長い間お疲れ様でした。
超匿名さんへ
そうですね。黄金期が作れなかった部分に関しては、監督の責任というよりもチーム全体の問題、課題でしょうね。
2021は「絶対大丈夫」をはじめ、高津監督でなければ優勝、日本一もなかったし、MVPは監督と言われるほど高津監督の存在は大きかった。(22はもちろん村上ですよね)
15年の投手コーチとして優勝に貢献したし歴史に名を刻むにふさわしい。とりあえずお疲れ様でしたという気持ちと、あれだけ喋りが上手いのですぐにメディアで会えるんだろうなぁという気持ちもあるので意外と寂しさは少ないです。
ロッテ吉井監督の退団が決まり、楽天三木監督も去就が怪しいようで、元ヤクルト監督ブームみたいなのがちょっと終わりそうで寂しいですね。三木監督がもし退団するなら是非ヤクルトの指導者として戻ってきてほしい。吉井さんも素晴らしい指導者だと思うのでヤクルトに来てほしいですが…さすがにコーチ格では厳しいかと思うので。
また小川GMも退任することが決まってますが、高津政権の要であった嶋ヘッドコーチがどうなるのか気になるところです。
saboさんへ
そうですね。高津監督はすぐにメディアに出てくるかもしれませんね。それはそれで楽しみです。
確かに嶋HCの去就は気になりますね。