思い出ショートショート㉖
明日は全日本大学駅伝が開催される。私は長年中央大学を応援しているのだが、忘れられないコンビがいる。それが松田和宏と榎木和貴である。駅伝もそうなのだが、団体スポーツの中でコンビやユニットとして覚えている選手というものはいるものである。大学長距離界、特に中大のオールドファンの方であれば、この2人をコンビとして覚えている方も多いのではないだろうか?長年中大を応援してきているが、松田と榎木以上にコンビ感を感じさせる選手にはまだ出会っていない。
2人が中大に在籍していたのは、1993年度~1996年度までの4年間である。松田は東海大山形高校から榎木は小林高校から中大へ進学している。両選手ともに高校時代から実績のあるランナーだった。
松田は、1年次から出雲、全日本、箱根という三大駅伝で主要区間を任されるとその後も卒業まで三大駅伝は皆勤であり、常にエース区間を任されてきた印象がある。当時は「早山時代」と呼ばれれていた時期であり、早大には渡辺康幸、山梨学院大にはステファン・マヤカという学生長距離界の大エースが君臨していた。そんな渡辺やマヤカと同じような区間を任され続けたのがこの松田である。全日本などで渡辺の歴史に残るような快走の前に逆転を許し、一時は「抜かれの松田」などという不名誉な異名が付いてしまった記憶もあるのだが、決して凡走をしたわけではなく、常に高いレベルで安定した走りを見せてくれる名ランナーだった。箱根では花の2区を4年連続で任され、3年次には、32年ぶりの総合優勝に大きく貢献している。長身を活かしたダイナミックなフォームで力強く走っていく姿が印象的である。4年次の箱根2区は、強烈な向かい風の中でのレースになったのだが、そんな中で集団の先頭を引っ張っていた姿が特に印象に残っている。
区間賞を獲得することはなかったのだが、チームの絶対的エースとして、主要区間を走り続けた姿は「エース」の姿そのものだった。
松田の同期である榎木も1年次から箱根を走り続け、1,2年次は8区で3,4年次は4区で区間賞を獲得してみせた。松田同様安定感は抜群であり、箱根駅伝での4年連続区間賞の走りは見事なものだった。もちろん松田がエース区間の2区を担ってくれたからこそ、もう一人の実力者である榎木を他の区間に回すことが出来たということも言えるのだが、関東の大学生ランナーが最大の目標とする箱根駅伝にしっかりコンディションを合わす姿が印象に残っている。どんな位置で襷が渡っても「榎木であれば何とかしてくれる。」という安心感があった。2年次は中大の復路優勝、3年次は総合優勝に大きく貢献してみせた。
実業団でもそれぞれ結果を残した松田と榎木は、2人ともに選手を引退後指導者として活躍を続けている。松田は学法石川(福島)で名ランナーを輩出し続け、榎木は創価大を強豪校へと育て上げている。中大で活躍していた時からすでに30年の時が経過しようとしているのだが、今尚日本長距離界に大きく貢献してくれている。
私がまだ幼い頃に出会ったランナーではあるのだが、強烈なインパクトを残してくれたランナーである。「松田と榎木」のような中大のコンビにまた出会ってみたいものである。
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