味方には背中で。敵にはボールで。

ヤクルト2-2広島

タイトルは石川のことである。味方には背中で、敵にはボールで「プロの世界はどういうものか?」ということを教えてくれているようである。ここ5試合は、5回無失点、6回1失点、5回2失点、6回1失点、6回1失点と安定した投球を披露してくれていた。勝ち星にはつながらなかったのだが、それでも腐らずに淡々と自分の投球に終始出来るのは「プロ」の姿そのものである。この姿を見てヤクルトの他の選手たちは多くのことを学ぶのだと思う。そして相手の広島は、来シーズン以降も視野に入れた中で若手の出場頻度が増えつつある。若手選手は石川と対峙することでプロの世界がどういう世界なのか身をもって感じるのではないだろうか?石川より球の速い投手はアマチュア球界にも山ほどいる。しかし石川が長年に渡って一線級で活躍し続けるには訳がある。ボールのキレであったり、コントロールであったり、配球であったり、駆け引きであったり…様々なスキルを使って相手打線を抑え込んでいくのである。対戦相手は石川のボールと実際に対峙した中で「プロ」の姿というものを学んでいくのではないだろうか?

相手先発がヤクルトを得意としている森下だっただけに、石川は先制点を許したくなかった。プレッシャーもかかるはずなのだが、その辺りは流石プロ20年目のベテランである。ランナーを許してもダブルプレーで切り抜けるなど、4回までは無失点で広島打線を抑え込み、目論見通りの投手戦に持ち込んでみせた。5回にボールが甘くなったところを石原、菊池涼に捉えられ、ソロホームラン2本で2点を失ってしまったのだが、6回で74球を投げ、被安打4(被本塁打2)、与四死球2の2失点というスタッツは先発投手としての役割を果たしてくれたと見て間違いないだろう。本人は、200勝という目標を公言しており、もちろん勝ち投手になりたい気持ちは持っていると思うのだが、今シーズンはここ数年の中でも特に好投が勝ち星に繋がらないケースが目立っている。それでも毎試合、淡々と自分の投球に終始出来る石川には、精神面の強さも感じることが出来る。これだけ勝ち星に恵まれないと、気持ちが折れてしまうこともあるのではないか?と一ファンとして余計なことまで考えてしまうのだが、おそらく石川の一番の目標はチームの勝利、優勝なのだと思う。勝ち星に恵まれていなくてもチームの優勝に向けて貢献していることは間違いない。今日も相手先発が苦手の森下だったことを考えれば、ロースコアの展開に持ち込み、最終的に引き分けられた一番の要因は石川の好投にあると思う。数字以上に評価されて良いシーズンを送っているのではないだろうか?

打線は、今日も苦手森下を中々捉えることが出来なかった。7回までヒット3本に抑え込まれてしまい、石川が失った2点が重くのしかかり始めていた。しかしこの重苦しい空気を変えたのは、今シーズンのヤクルトのストロングポイントの1つである代打陣だった。1アウトから代打宮本がヒットで出塁すると続く代打の川端もヒットで続き、チャンスを拡大してみせた。すると1番塩見、2番青木にタイムリーが飛び出し、怒涛の4連打で試合を振り出しに戻してみせた。その後の山田、村上は打ち取られてしまい、勝ち越しには至らなかったのだが、7回までほぼ完璧に抑え込まれていた森下相手に代打で登場してチャンスメイクをした宮本、川端の準備と集中力に驚かされた。
森下はまだプロ2年目の選手ではあるのだが、ルーキーイヤーから新人王を獲得するなど結果を残し、すでに広島のエース格となっている。特にヤクルト戦では強さを発揮しており、今日もヤクルト打線は7回まで森下から得点を奪うことが出来ていなかった。そんな投手相手に代打で結果を残すことは至難の業なのだが、その至難の業を宮本、川端が立ち続けに成功してみせた。宮本も川端も森下のボールにしっかり対応し、クリーンヒットを放ってみせた。この連打で完全に球場が雰囲気が変わったように感じた。続く塩見、青木にタイムリーが飛び出し、負け濃厚にも感じたゲームを何とか引き分けに持ち込んでみせた。
「ガラスの天才」川端の代打での天才ぶりはもちろん画になるのだが、その陰に隠れながら与えられた場面で結果を残す宮本も素晴らしい。ヤクルトの大きな武器になっている。

明日からはDeNAとの3連戦である。後半戦の当初にも触れたと思うのだが、個人的にはこのDeNA戦が一つのポイントになると睨んでいる。中日、広島に比べるとチームの戦力が整って来ており、現在のチーム力というものだけを冷静に比べると上位3球団とも引けを取らないのだがDeNAだと思っている。そのDeNA相手に白星を重ねられるか注目してみたい。

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コメント

  1. JEF九郎 より:

    現地観戦してきました。
    石川の集中力は素晴らしいですね。あと、比べてはいけないのですが、私は最近少し走ったりすると身体に違和感が生じたり腰や膝が痛んだりして老いを猛烈に感じるこの頃ですが、肉体の修練も実に素晴らしいと思います。同い年のプロ野球選手かまだ現役でこれだけの活躍をしている。非常に勇気を貰えます。
    それまでストライク先行だった中、5回は少し意識して力んでボール先行となり、置きにいってしまった感はあったと思いましたが、次の6回には攻めの意識を取り戻し、またストライク先行の投球に戻ってました。
    この辺りは若手投手陣は是非見習って欲しいです。


    そして宮本、川端は本当に素晴らしい。この二人がネクストに居るだけで球場の雰囲気が変わります。
    「この回が勝負なんだ」という首脳陣のメッセージがわかりやすく伝わりますし、実績からしても上位打線に引けを取らないので、本当に頼もしい限りですね。
    (青木も良かったし、塩見もそれまで3打席良い当たりだったので、イケると思ってました。)


    一方で山田と村上ですね。今シーズンは毎度のことですが、どうも回の後半になるとチャンスで気合い過ぎのような。

    脇役は揃ってます。優勝出来るか否かは、主役の二人が勝負どころで1本打てるようになるかが鍵だと改めて感じました。決して簡単なことでは無いですが、二人はやらなければならない立ち位置に居ます。なんとかプレッシャーを克服して我々を優勝に導いてくれる働きを期待し続けたいと思います。

  2. 超匿名 より:

     年齢を考えれば、最近の石川の安定感は感動的ですらあります。自身の勝ちに恵まれないならば、優勝という形で報いられて欲しいですね。
     選手層を考えると、今シーズンの九回打ち切りという制度には大きく助けられていると思います。例年通りだったら勝敗がどう変化していたか、あまり考えたくはないですね。
     ベイスターズは二年連続で主力打者が移籍しているので、もっとガタガタな成績になると予想していました。打線は全く油断出来ませんね。

  3. FIYS より:

    JEF九郎さんへ

    現地観戦お疲れさまでした。確かに石川の投球には勇気を貰えますよね。

    川端、宮本の集中力も凄まじいものがありますよね。

  4. FIYS より:

    超匿名さんへ

    石川にはもう一度優勝を味わってもらいたいですよね。

    確かに9回打ち切りのルールはヤクルトにはプラスに働いた部分が多いように感じますね。延長戦があればいくつ勝ちを拾えたか分からないですよね。

    DeNA打線はセリーグ一の力を持っているかもしれないですよね。

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