高津監督のマネジメントがもたらした勝利

ヤクルト4-2広島(延長12回)

もちろんヒーローは決勝2点タイムリー2ベースを放ったルーキー丸山和で異論はないのだが、今日のゲームの勝利は、高津監督のマネジメント、采配によってもたらされたものだと感じている。今日のゲームに勝利するというマネジメントだけでなく、今シーズンを戦い抜くためのマネジメント、チームの将来まで見据えた中でのマネジメントというものが随所に見られている。高津監督は新時代の名監督として名を連ねることになりそうである。

①若手の抜擢
・もちろんこれは、今日に限ったことではないのだが、昨シーズンリーグ優勝、日本一を達成した中でも今シーズンは若手が抜擢されている。開幕から全試合出場を続ける長岡、ベテラン石川とバッテリーを組み続けている内山壮は、昨シーズンはほぼ1軍のゲームに出場していない選手である。その他にも打撃に特徴がある濱田、今日のヒーローとなった丸山和、投手では木澤など昨年のリーグ優勝、日本一にほぼ絡んでない選手を次々と戦力に仕立て上げてくれている。首位を独走しながら、これだけの若手を抜擢することが出来ることが、驚きである。
今日のゲームでは、長岡が先制ホームランを放ち、内山壮は、延長12回のゲームセットまできびきびした動きで投手陣を引っ張り、丸山和は、勝ちがなくなる目前で大仕事を見せてくれた。木澤も1イニングを完璧に抑えるなど、どの選手もチームの貴重な戦力になっている。もちろん結果を残しているのは選手自身なのだが、高津監督でなければおそらくこれだけ若手選手にチャンスを与えることは出来ないのではないだろうか?

②投手運用
・NPBの常識で言えば、中6日で先発ローテを回すのがスタンダードな起用法なのだが、高津監督は先発投手の登録抹消も頻繁に行いながら、中7日以上空けて先発投手に登板の機会を与えるなど、選手のコンディショニングという部分を重要視している。今日先発した大ベテラン、42歳の石川は、基本的には中10日以上空けての登板が続いている。石川は大ベテランであり、スタミナ面には不安も感じているはずなのだが、中10日以上空けての登板を続ける中で、毎回しっかり試合を作ってくれている。元々は中5日や中4日でも投げることが出来る投手であり、中10日以上空くと逆に調整が難しくなるなどのデメリットもあると思うのだが、今の所中10日以上空けるメリットの方が上回っている。石川に限った話ではないのだが、この起用法は中々勇気のいる起用法である。
リリーフ陣に関しても枚数を揃え、3連投はしない、球数を多く投げた翌日はベンチから外すなどの配慮を続けている。NPBでは90年代から投手の分業制というものが確立され始め、2000年代に入ると「JFK(ウィリアムス、藤川、久保田)」や「YFK(薮田、藤田、小林雅)」などといった強固な勝利の方程式が誕生し、勝ちパターンに登板できる好投手を3枚~4枚揃えることが勝利への近道とされていた。ヤクルトでも「MOL(松岡、押本、イム)」、「ROB(ロマン、オンドルセク、バーネット)(※秋吉も含めてAーROBと呼ばれることもあったか?)」などといった勝利の方程式で競り合いをものにしてきた歴史があった。昨シーズンも基本的にはマクガフを抑えに起用し、その前のセットアッパーを清水や今野、石山辺りが担うことが多かった。しかし今シーズンは僅差の勝ちゲームで決まった投手を起用するというよりもリリーフ陣もローテーション的に起用することが目立っている。今日であれば、1-1で迎えた8回、9回をコールに任せた場面が気になった。8回のコールの投球内容はお世辞にも状態が良いようには思えず、普通に考えれば、9回は別の投手に任せる場面だったはずである。しかし高津監督は、9回のマウンドにコールを上げた。正直今日のゲームの勝利だけを考えるのであれば、コール続投の判断は、決して良い手だとは思わない。しかしシーズンを通して考えた時には、こういった起用も必要になるということなのだろう。今日はコールが三者連続三振で高津監督の起用に応えたのだが、リスクもある手をブレずに打てるところに高津監督の芯の強さを感じることが出来た。結果的にも試合が延長12回までもつれたため、コールが2イニングを投げ切ってくれたことは大きかった。
マクガフが打たれて追いつかれても、その後で清水、田口が11回、12回を完璧に抑える辺りに高津監督のマネジメント、投手運用の冴えを感じさせてくれる。

③ゲーム終盤の作戦と選手起用
・今日のゲームであれば早い段階で丸山和を起用するというカードは切っていたのだが、その後の控え選手の起用法は、試合展開を読みながら、慎重に行っていたと感じる。ランナーが2塁に進んでからオスナの代走に荒木を起用したり、代打で登場し死球で出塁した川端に代走を送らずに、フルカウントからエンドランを仕掛けた場面などは印象的だった。終盤の戦略としては、スコアリングポジションにランナーを進めることが基本線になり、送りバントを多用するのだが、今のヤクルトには「何か仕掛けてくるのでは?」という不気味さを相手ベンチが感じているのではないだろうか?色々仕掛けてきそうで、実はセオリー通りの攻撃を展開をすることが多いところは、野村克也監督を思わせる部分もある。

今日のゲームでは、ヤクルト快進撃の一番の立役者村上が4打席連続三振に倒れてしまったり、山田もチャンスで一本を出せなかったり、マクガフもリリーフに失敗してしまったりと、負けても仕方ないような要素がいくつもあったのだが、それでも勝ってしまうのだから、これは高津監督のマネジメントのおかげという部分もあるはずである。1シーズンの中にはいくつか監督の力で勝利を手にするゲームがあると思うのだが、それが今日のゲームだったのではないだろうか?

P.S 決勝タイムリーの丸山和は嬉しいでしょうね。坂口に代わって6回から守備に就き、いきなり自分の頭上を越される同点ホームランを小園に浴びる展開になってしまい、村上の後を任されることとなった打撃では苦しんでいたのだが、最後に結果を残しましたね。スピード、肩の強さを活かした守備、走塁は一定以上の力が備わっているように感じるので、打撃次第で未来像が変化してきそうですよね。まずは自分の長所であるスピードを活かしたプレーでアピールしてもらいたいですよね。

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コメント

  1. しみぶ より:

    やっと、木澤投手、坂倉選手を抑えましたね!

    余談を2つほど
    ・水曜の試合での、村上選手のホームランに起きた拍手ですが、色々記事を見ると、打撃の凄さへの称賛、降参の意味合い、と書かれたものがありました。
    ・カープに秋山選手が加入しました。
    次のカープとの対戦は、オールスター前の神宮でです。
    そのカードで秋山選手との対戦があるかわかりませんが、渡米前の交流戦でも、スワローズ戦の打率が、なかなか良かったようなので、さてどうなることか…
    失礼しました。

  2. 超匿名 より:

     野村監督がID野球をなら高津監督は高津マネジメントが代名詞となりますね。
     決勝点の丸山は日曜の巨人戦であり得た場面でしたが、見事に結果を残しました。去年の砂糖や牧で大卒野手に対する期待値が上がった感があります。そこまで望むのは酷ですが、食らいついていって欲しいですね。
     長岡は思ったよりパンチ力ありますね。八番にも油断のならない打者がいるのは、相手からすれば嫌でしょう。
     石川は熱い中お疲れ様でしたという感じです。勝てなくて残念でしたが、十分な投球内容でしたよ。
     これで早くも50勝ですか。他球団ファンからはペナントの灯が消えるとか、つまらないとかあるでしょうが、一昨年までの酷いシーズン、特に96敗のことを思うと、その逆の90勝以上する突き抜けたシーズンがあってもいいじゃないかという思いを持っています。奥川やサンタナ次第では、その数字が夢物語とも思えませんし、この先仮に五分だったとしても、去年優勝した勝ち星を上回る80勝台になります。巨人が対抗馬だとしても、ここから去年後半のヤクルト級の快進撃が必要でしょう。何が起こるかわからないという気持ちを持ちながらも、リーグ優勝の確率は相当高いと思っています。

  3. FIYS より:

    しみぶさんへ

    木澤はようやく坂倉を抑えましたね。思わずガッツポーズが出ていましたね。

    秋山はまずは、どの程度実戦感覚が戻っているか?という部分に注目したいと思っています。

  4. FIYS より:

    超匿名さんへ

    こういった展開でも勝てる辺りに今のチーム状態の良さを感じることが出来ますよね。まだシーズンは長いですが、ここまで来たら逃げ切ってもらいたいですよね。

  5. sabo より:

    10回表に會澤の送球ミスの間に塩見が本塁に帰ってきた走塁はウルトラプレーでした
    塩見自身の異常な速さもありますが、あそこで走る勇気。そして自分が決勝点となりチームを勝たせるのだという強い意志を感じさせます

    レギュラーになって安定感が増したと感じる塩見でしたが、もう一歩上の精神状態にあるように感じますね

  6. FIYS より:

    saboさんへ

    プロ入り2年目、3年目辺りのオープン戦での積極的な走塁は、夢を描けるものだったんですが、1軍で結果を出すまでに時間がかかりましたよね。今は、メンタルが充実しているのか、1軍の舞台でも積極的な走塁を見せてくれていますよね。

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