村上宗隆の一人横綱相撲

ヤクルト4-2阪神(延長11回)

横綱相撲とは、「横綱にふさわしい相撲の取組のこと、とりわけ相手の果敢な攻めを真正面から受け止めてひるまず余裕を持って返すような堂々とした勝ち方のこと。」とある。この「横綱相撲」という言葉、相撲以外のスポーツでもよく用いられる用語である。もちろん野球の世界でもよく用いられる言葉であり、近年ではソフトバンクの勝ちっぷりについて「横綱相撲」という言葉が使われることが多かったように記憶している。
ヤクルトに関しても、これから新たな黄金期を築いていくようであれば、いつかブログ記事の中でそういった言葉を用いることもあるかもしれない。しかし今日の試合のブログ記事の中で「横綱相撲」という言葉を使うことになると思ってもみなかった。前々日、前日のゲームの記事でも書いたように、現在のヤクルトのチーム状態は良くない状況にあり、セリーグで最も安定しているのは、相手の阪神であると認識していた。阪神に9ゲーム差を付けているとは言え、ペナントレースを易々と逃げ切ることの出来る状況ではないと感じていた。今日のゲーム展開も基本的には、阪神が押し気味にゲームを進めていたのだが、その阪神に1人でストップをかけたのが4番の村上だった。

ゲームは、ヤクルト原、阪神ガンケルによるテクニカルな投手戦でスタートしたのだが、先に我慢できなくなってしまったのは原だった。4回に近本、佐藤輝、大山に3連打を浴び、先制点を許すと糸原にも犠牲フライを浴び、この回2点を失ってしまった。5回もガンケルに四球を与えるなど自滅してしまい、結局4回0/3でマウンドを下りることとなってしまった。その後のピンチを代わった久保が凌ぐなど、何とかゲームを壊さずに0-2のスコアのまま、終盤まで持ちこたえていたのだが、チームの勢いの差、状態の差は、明らかであり、阪神は逃げ切り体勢に入っていた。
6回まで無失点に抑えられていたガンケルは、個人的には調子はそこまで良くないと感じていたため、7回の先頭打者である村上から継投に入られたことも、矢野監督の好采配だと感じながらテレビ観戦をしていた。阪神は左殺し(ヤクルト戦においては村上殺し)の渡邊をマウンドに上げ、村上をしっかり抑えて勝つことで、更に勢いを増そうとしているように感じた。実際に渡邊は、長い腕を有効に使うような左打者の背中から入ってくるスライダーを武器に完璧に村上を料理しにかかっているように感じた。カウント1-2から投げ込まれた外角のスライダーに関しても決して失投と言う類のボールには思えなかった。しかし村上は、その外角のスライダーをしっかりと捉えると、打球は、浜風にも乗って、レフトスタンドに飛び込むソロホームランとなった。正直この一発で今日のゲームの流れが大きく変わるとは思えなかったのだが、村上殺しとして起用された渡邊を打ったことが今後のシーズンに繋がると感じる一発となった。しかしこの一発は、今日のゲームにおける村上の序章に過ぎなかった。
スコアは、1-2のまま9回に突入し、阪神は、この回からクローザーの岩崎をマウンドに上げた。山田が簡単に打ち取られた後に村上に打席が回ったのだが、その初球のインコースのストレートを完璧に捉えると打球は浜風に押し戻されながらもライトスタンドに飛び込む同点ホームランとなった。このホームランに関しても岩崎のインコースへのストレートは決して失投という類のボールではなかったと感じる。シンプルに村上の凄みを感じることが出来るホームランとなった。村上の2本のホームランで試合を振り出しに戻すと、最後のドラマは、延長11回に待っていた。
1アウトから青木が振り逃げで出塁すると、10回裏から山田に代わってセカンドに入っていた奥村がセンターフライに倒れ、2アウト1塁という場面で村上に打席が回った。続く打者がサンタナから代わった渡邊だったこともあり、このシチュエーションでも村上が歩かされる可能性はあったと思うのだが、阪神ベンチは村上との勝負を選択した。阪神ベンチはやはり、今後のヤクルトとの戦いも意識した中で今日は、強気に村上との勝負を選んだと思うのだが、阪神石井がカウント2-0から投じたナックルカーブに村上がしっかり反応すると打球はレフトスタンドに飛び込む、勝ち越し2ランホームランとなった。このホームランに関しては、1本目、2本目に比べると石井のナックルカーブが多少甘いコースに入ったようにも感じたのだが、観戦している両チームのファン含めて、「ここは無理に村上とは勝負しないかな?」という意識を持っている中で、カウント2-0からの今日初見の手を出しづらいナックルカーブにしっかり反応できてしまうことに驚きを感じた。打席での集中力の高さが凄まじい。
阪神ベンチが今後のペナントレースのことまで考えて、村上を潰しに来たシナリオを崩す、渡邊からの1本目のホームラン、適地甲子園でのカード3連敗が目前に迫った中で阪神クローザーの岩崎の生命線のボールともいえるインコースのストレートを完璧に捉え、試合も振り出しに戻した2本目のホームラン、高い集中力で阪神バッテリーの細心の配球さえ粉砕してみせたチームを勝利に導く3本目のホームランと、3本のホームラン全てが、今日のゲームの勝利に直結する非常に価値の高いホームランとなった。
これだけのホームランを連発することなど滅多に見られるものではない。ヤクルト関係で言えば、2015年の日本シリーズで山田哲人がソフトバンク相手に放った3打席連続ホームラン以来だろうか?→「スーパースター山田哲人!異次元の3連発!
この時の山田は、日本シリーズでしかも当時常勝を誇ったソフトバンク相手に放った3連発であり、シチュエーション的にも非常に価値が高かったのだが、今日の村上の3連発も同じくらい価値のある3連発になったのではないだろうか?

「一人横綱相撲」という言葉はもちろん私の造語である。コロナクラスターにおけるチームのピンチにも4番村上が中心選手という自覚を持って、責任感を背負い込みながらも結果を残し続けていること自体が、「横綱」という地位を彷彿とさせていたのだが、今日のゲームでのチームの勢いそのままに、果敢に強気で攻め込んできた阪神相手にホームラン3発で返り討ちにした場面を目撃して「一人横綱相撲」という言葉が浮かんできた。山田哲人も若くしてスーパースターの仲間入りを果たしたのだが、この村上も山田同様のインパクトを与え続けている。こんな短期間に野球史に残るような選手2人をヤクルトファンとして応援できる幸せを噛み締めている。

P.S 今のヤクルトは決して「横綱相撲」を取れる力はないため、今日のブログ記事は本当に村上のための記事になってしまったのですが、5回のピンチを封じた久保の投球が少し気になりました。左打者のインコースにシュートを投げ切れるようなってきており、今後働き場所を確立する可能性が出てきたように感じました。ラストチャンスのつもりで頑張ってもらいたいですよね。

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コメント

  1. 超匿名 より:

     村上のホームランは神宮ならわかりますが、左打者に不利な甲子園での快挙ですから一層輝いてます。その村上の超人的な活躍があった上で、この試合は先発が少々失点しながらも、リリーフが耐えて勝利をもたらすという、チームの調子が良かった頃の勝ち方でした。
     この連戦は阪神の高い投手力を見せつけられたのと、村上の孤軍奮闘という感じでしたね。三連敗はなんとか回避したものの、当座を凌いだにすぎないという印象です。先発は青柳を筆頭に全員がエース各、リリーフも防御率一点台がゴロゴロいるハイレベルな投手陣であり、巨人と違い今後も追いすがってくる力がありそうです。
     

  2. FIYS より:

    超匿名さんへ

    村上様々のゲームになりましたね。

    阪神は投手陣がしっかりしているため、安定して白星を重ねそうな雰囲気がありますよね。こうなるとまだまだ山場は来そうですよね。

  3. まるふく より:

    こういう表現がポンと出てくるから、ここはスワ界の横綱ブログなのだと思っています。

  4. FIYS より:

    まるふくさんへ

    勘弁してください(笑)。恥ずかしい限りです。

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