古田敦也はMLBで通用したか否か?

選手


古田敦也氏がMLB「アリゾナ・ダイヤモンドバックス」で臨時コーチを務めていることがニュースになっている。ヤクルトで同僚だったロブロ監督の意向で実現したということである。こういったニュースが飛び込んでくると、「ifの話」をしたくなるものである。「もしも古田敦也がMLBに挑戦していたら通用したか否か。」という話である。
まずは古田の経歴、NPBでの成績を振り返っておきたい。

経歴
川西明峰高→立命館大→トヨタ自動車→ヤクルトスワローズ(1990~2007)

通算成績
2008試合 7141打数2097安打 打率.294 本塁打217 打点1009 盗塁阻止率.462

タイトル
首位打者(1991年)、最多安打(1993年)

主な表彰
MVP(1993年、1997年)
ベストナイン(1991年-1993年、1995年、1997年、1999年 – 2001年、2004年)
ゴールデングラブ賞(1990年 – 1993年、1995年、1997年、1999年 – 2001年、2004年)
日本シリーズMVP(1997年、2001年)


上記を見てもらえば分かるように、古田は90年代、2000年代のNPBを代表する捕手だった。その存在感は絶大だった。しかし「MLB」ということを考えると古田が活躍し始めた90年代前半に関しては、まだ日本人メジャーリーガー自体が存在しておらず、夢のまた夢の世界であった。それでも95年に野茂英雄がMLBに渡り結果を残し、2001年にはイチローがMLBに渡り、MVPを獲得するなど、NPBのトップクラスの選手がMLBでも通用する所を示してくれた。そして2006年には城島健司がMLBで正捕手を務め、捕手という特殊なポジションでも日本人が通用することを示してくれた。
しかし古田のメジャー挑戦については、話題に上がることはあまりなかった(時代の流れと古田の全盛期がズレていたか…)。それでもテレビ番組の中で他の日本人メジャーリーガー(小宮山悟氏など)が「古田さんはメジャーでも通用する。」という主旨の発言を行っていたことは覚えている。

それでは実際に古田がMLBに挑戦していたのであれば、通用したのだろうか?正直古田が現役時代に「MLBで通用した。」という思いを抱いたことは、私自身は一度もなかった。しかしそれは時代的なものも絡んでいたのだと、今になって振り返ることが出来る。野茂が活躍して以降も当初は日本人投手は通用するが、野手は難しいだろうという声が大きかったし、イチローに関してもメジャー挑戦1年目については日本の解説者も大活躍を予想する人はそう多くはなかったと記憶している。解説者によっては「もしかしたらパワーと身体能力に優れる新庄の方が数字を残す可能性があるのではないか?」という主旨の発言をしている人もいたことを覚えている。古田が活躍していた時代というのは、それ程までにNPBとMLBの距離が遠かった時代である。イチローがMLBに挑戦した年には古田はすでに35歳という年齢になっていた。そういった時代背景があったのである。そんな時代に「古田はメジャーで通用するのか?」という話題自体がそれ程上がることがなかったのである。
しかし冒頭に書いた通り、今回アリゾナ・ダイヤモンドバックスのキャンプに臨時コーチとして招かれたという事実がある。現在ダイヤモンドバックスの監督を務めるロブロ監督は、2000年にヤクルトでプレーしているのだが、その際に古田の捕手としての技術や人間性を高く評価していたようである。ロブロ監督は、選手としてもMLBで数年間プレーしており、MLBのレベルをよく把握していたはずである。そのロブロ監督(当時は選手)が古田のことを高く評価していたということは、技術的にもMLBで通用するだけのモノを持っていた可能性があるということは言えないだろうか?少し細かく見ていきたいと思う。

打撃
・古田は元々ディフェンス型の捕手として高く評価され、ソウルオリンピックの日本代表に選ばれ、ドラフト2位でヤクルトに入団することになる。しかしそこから野村監督の教えを乞い、打撃でも著しく成長することとなった。プロ2年目には、落合とのデッドヒートを制して.340という高打率で首位打者を獲得すると、翌年にはシーズン30本塁打を記録するなど打てる捕手の代表的な選手となった。その後もヒットを積み重ね、名球会入りも果たしている。.294という通算打率も右打ちの捕手としては、立派な数字である。
・但しMLBで通用したか?という部分は、NPBと同様の数字を残すことは難しかったのではないだろうか?MLB投手のムービング系のボールへの対応や、当時にNPBに比べて飛ばないボールを使用していた印象もあるため、これらのハードルを越えるのは難しかったのではないだろうか?しかし様々な環境にアジャストする力やメンタルの強さという古田の長所がそれらのハードルを乗り越える可能性もあると見ている。嫌らしい下位打線の打者として生き残る道はあるのかもしれない。

守備
・キャッチング、スローイング、ブロックという部分については、城島がある程度こなせていたことから、古田も通用した可能性が高いのではないだろうか?当時はまだコリジョンルール採用以前であり、走者が捕手に向かって体当たりすることも当たり前に行われていたため、ブロックという部分については不安を感じるが、古田は城島のような剛の強さはなくても柳のような柔のしなやかさは持っていたため、ある程度適応できた可能性は高いのではないだろうか?
スローイングに関しては、MLBでも十分に通用したのではないだろうか?柔らかくて速い身のこなしと正確なコントロールで相手走者にプレッシャーを掛けれる捕手になったはずである。
キャッチングに関しても問題はないと思われるのだが、当時のメジャーではいわゆる「フレーミング」という言葉をあまり聞かず、古田のボールをしっかり止めてキャッチングする技術が、審判を欺く行為(ボール球をストライクにごまかす行為)と捉えられる危険性があった可能性がある。この辺りは、時代的なものもあるため、判断し辛いところである。しかし間違いなくハイレベルな技術を持っていたことは確かである。
ここに配球という部分も加わるのだが、この辺りは、MLBの首脳陣が古田を高く評価し、古田がイニシアチブを握れる環境を与えられるかもしくは、自分自身でそういった環境を作り上げていく必要があったと思われる。素人には見え辛い部分ではあるのだが、NPBでは捕手古田の存在自体が武器となっており、相手チームに脅威を感じさせることが出来ていた。しかしここまで「捕手古田」像を印象付けることはMLBでは難しくなるのかもしれない。

その他
・打撃、守備以外の部分ということになると古田のコミュニケーション能力であったり、身体の強さであったり、メンタルの強さであったり、野球というゲームに勝利するための思考力という部分が武器になってくると思われる。打つ・投げる・走るという基本的な能力以外の部分で、MLBの野球を変えられるかどうか?という部分も重要な要素になってくるのかもしれない。

長々と書き連ねてしまったのだが、個人的にはやはりNPBのような数字を残すことは難しかったのではないか?という結論に至ってしまう。しかしMLBで正捕手の座を射止めた可能性はあるのではないだろうか?城島とはタイプの違った捕手としてMLBの野球の価値観を変えるような捕手になっていた可能性もある。最終的な私の結論は「MLBで通用した。」というものにしたいと思う。皆さんはどうお考えでしょうか?




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