MGCは期待通りの面白さだった!

陸上競技

9月15日に行なわれたMGCは男女共に非常に面白いレースとなった。レース前の記事も書いていたため、観戦出来た男子を中心に簡単に振り返ってみたい。
過去記事はこちらから→「MGC展望

男子
・ペースメーカーがいない中での代表争奪戦ということでどんな展開になるのか予想が付かなかったのだが、スタート直後から4強の一角設楽が飛び出し、大逃げを打つ形となった。やはり設楽は現在の日本マラソン界を語る上で外せない選手だという事を印象付けてくれた。実力者30名によるガチンコ勝負の中でこれだけ思い切ったレース展開ができるのは設楽のみである。1キロ3分のペースで押し切れるとは思わなかったのだが、しっかり主導権を握る形で走れていたため、35キロくらいでペースが落ちてもこのまま逃げ切る可能性が高いかな?と思いながら観戦していた。見事な戦略だったと思う。しかしハイペースのダメージでペースが落ちるのが予想よりも10キロ以上早く訪れてしまった。20キロ以降思うようにペースが上がらなくなり、後方集団との差は一気に詰まってしまった。ついに37キロ地点で捉えられ、設楽のMGCは終わりを迎えた。しかし設楽の走りはインパクト十分だった。ライバルに与える影響も大きかったと思う。まだファイナルチャレンジで3つ目の枠を獲得する可能性がこの設楽にはあり得ると感じさせてくれるような走りだった。

・そしてこの激戦を制したのは富士通の中村だった。駒沢大学時代から狙ったレースにしっかり合わせて、粘り強い走りを披露してくれる計算の出来るランナーだった。いかにも駒沢大学出身のランナーと感じさせてくれる生真面目さと粘り強さを持ったランナーだと感じていたのだが、今回のMGCではその長所を如何なく発揮してくれた。36キロ地点で嘔吐したとの話しもあったのだが、その後も冷静に走り続け、残り3キロの服部、大迫との激闘を制してみせた。大迫、服部に比べるとスピード面では劣ると思うのだが、ラスト勝負でその2人を振り切った場面は見事だった。駒沢大学の先輩にあたる藤田敦史に比べてもまだスピード面では敵わないように感じるのだが、タイプ的には非常に似たランナーなのではないだろうか?素晴らしい勝負根性を見せてくれた。

・そして2番目の枠を獲得したのは、4強の一角服部だった。4強の中でも大迫、設楽、井上に比べるとスピード、マラソン実績で多少劣っているのかな?という印象もあったのだが、終始冷静にレースを進め、ラストで大迫を振りきってみせた。この冷静さが服部の武器ではないだろうか?東洋大学時代からどんな展開でも自分のペースに持ち込める強さを持ったランナーだったのだが、マラソンの舞台でもその特徴が活かされている。圧倒的なスピードがなくてもロングスパートや粘り強い走りで42.195キロを組み立てられるクレバーなランナーだと感じる。いい意味で若さを感じさせない選手である。

・そして3位で代表内定を獲り損ねてしまったのが大迫である。正直設楽が掴まったことでラストのスピードで他のランナーを上回る大迫が有利になったと感じていたのだが、ラスト2キロですでに大迫の足は限界に達してしまっていたようである。私の印象だと大迫のようなスピード型のランナーはマラソンでは脆い部分が見えやすいという偏見があるのだが、大迫はそういった脆さをあまり感じさせないランナーである。今回もゴールまでしっかり優勝争いを繰り広げてみせた。速いだけではないランナーである。しかし代表を逃してしまったのも事実である。3位には入っているため、新たにファイナルチャレンジで日本記録を更新する選手が現われなければ大迫が代表となるのだが、設楽、井上といった記録を持っている選手が残っていることから大迫も難しい判断、調整を余儀なくされそうである。
大迫にとっては厳しい現実を突き付けられる結果となったのだが、非常に見応えのあるラスト2キロの勝負だった。

・その他では2位集団のペースを上げた富士通の若手鈴木やいつの間にか先頭集団に入り、レースを盛り上げた安川電機のベテラン中本、レース前はあまり注目を浴びていなかった九電工の大塚、GMOアスリーツの橋本、NTT西日本の竹ノ内辺りがレースを大いに盛り上げてくれた。
現代のマラソンのレースは基本的にはペースメーカーがいる中で行なわれるスピードレースが主流なのだが、私個人としては、今回のようなペースメーカーなしでの42.195キロの方が各選手の戦略、駆け引きが楽しめるため好きである。非常に面白いレースを見る事が出来、満足している。

女子
・女子は男子と時間が重なっている部分は見ることが出来なかったのだが、前田穂の走りが見事だった。当日MGCを走ったランナーの中では実力が頭1つ抜けていた印象である。日本マラソン界もいつの間にか男子の方に勢いを感じるようになっていたのだが、今回代表を獲得したランナーの中で最もメダル争いを期待できるのはこの前田穂なのではないだろうか?
レース中盤からの飛び出し、その後のレース運びともに見事だった。

・そして2位にはトラックの実力者鈴木が入った。後半大きく失速してしまったが、それでもしっかり代表権は確保してみせた。まだ本番までには時間があるため、それまでにマラソン仕様の走りを身に付けてもらいたい。スピードという意味では非常に魅力的なランナーであるため、前田穂同様非常に楽しみである。

次回のオリンピックの選考会は同様の形式で行なわれるかどうか決まっていないようだが、個人的にはオリンピックで結果が出なかったとしても今回のような形式を続けてもらいたいと感じている。選手にとっても関係者にとってもファンにとってもメリットが大きいフォーマットだと感じている。

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コメント

  1. タラちゃん より:

    設楽は確信的に前半飛ばしましたね。
    さすがに高温多湿なんで持たないかな?って思ったが、やはりっていうのもあったし、
    MGCのあとに日本記録出したら東京オリンピックのチャンスあるっていうのもあって飛ばしましたね。
    さすがに福岡は厳しいでしょうから、東京かびわ湖になりそうですね。
    日本新記録出してもらいましょう!

    大迫はコンディション不良だった気がします。
    明らかにペース配分がおかしかったので、それでも3位はさすがかと。

    中村と服部にはしっかりと時間あるので調整してもらい、箱根駅伝出場者初のメダリストになってほしいです。

    女子はあまり見れず最後のほうで副音声聞きながら見ていたので、増田明美の解説良かったです。すごいね。彼女の取材力は(笑)。

  2. FIYS より:

    > タラちゃんさんへ

    非常に面白いレースでした。

    増田明美氏は選手の細かい情報を伝える解説があまりにも有名になってしまいましたが、長距離界のことを冷静に見つめる視点も持っていますよね。

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