「夏の神宮劇場」開演

ヤクルト11-10巨人

今シーズンは春先から、神宮球場でもロースコアのゲームが続き、「ボールが飛ばなくなっているのでは?」などといった声も聞こえてきていた。私自身もこれだけ得点が入らないということは、ボールなどに何らかの変化があったのではないか?という気持ちも持っていたのだが、夏の始まりと共に「いつもの神宮球場」の姿が戻ってきた。それにしても、この3連戦の16-6,5-19,11-10というスコアは「やり過ぎ。」感もあるのだが、こういった熱い乱打戦が好きなファンの方もいるだろう。「夏の神宮劇場」の開演である。

先発のスアレスは、今日も結果を残すことが出来なかった。初回に村上の落球からピンチを作ってしまうと、そこからヒット4本を集められて、いきなり3点を失ってしまった。2回は三者凡退に抑えたものの、3回もヒットと四球が続いてしまい、結局この回は1つのアウトも取ることが出来ず、5失点でKOされてしまった。私自身は、このスアレスに関しては、特段悪いところが見付からず、期待しているのだが、毎試合、相手打者にこれだけしっかりボールを捉えられてしまっているということは、現状NPBの1軍レベルの投球が出来ていないということなのだろう。3回投げ切れず、5失点でKOされてしまったということは、重く見なければならないのかもしれない。イノーアのような状況に陥ってしまうのだろうか?
3回0アウト満塁でマウンドに上がったのは、支配下登録され、即1軍に登録された小澤だった。ソフトバンク時代に1軍で投げて以来、1761日ぶりの1軍マウンドということだったのだが、このピンチを凌いだことで、試合の流れを変えてみせた。正直1点でも追加されてしまった場合、昨日のような展開になってしまう可能性もあったため、よく凌いでくれたと思う。小澤はこのまま6回までの4イニングを投げ切ってみせた。6回に中田、丸にソロホームランを浴び、同点に追い付かれてしまったのだが、ヤクルトでのデビュー戦で厳しいシチュエーションの中でも4回2失点で抑えたことは、最大限の称賛を送って良いと感じる。
おそらく2軍ではそれ程長いイニングを投げていた記憶がないのだが、今日は4イニングを任された。この辺りの難しさもあったと思うのだが、想像していた以上にフォームは安定しており、スライダーの他にフォークがある程度コントロールできる球種になっており、それなりに抜けも良かったことが印象的だった。小澤自身のことを考えれば、1イニングを全力で抑える方が合っていると思うのだが、今はそんなことを言っていられる立場ではない。与えられた役割をこなしていってもらう他ない。そんな厳しい立場の中で迎えたヤクルトでのデビュー戦は、厳しいシチュエーションの中でも試合の流れを変える、ほぼ100点の仕事をしてくれたのではないだろうか?背番号「70」のユニフォームが間に合わず「014」のユニフォームのまま登板したのだが、小澤がしっかり爪痕を残してくれた。今日のゲームのヒーローの1人ではないだろうか?

小澤が6回まで投げてくれたことで、7回から通常の継投に入ることが出来たのだが、7回は今野がピンチを招くと、田口が前回の登板に続いて、火消しをすることが出来ず、代打中島に勝ち越しタイムリーを浴びてしまった。それでも打線がその裏に追い付くと、8回は清水が完璧に巨人打線を抑え、味方の勝ち越し点を呼び込むと、最後はマクガフが2アウトから2点を失いながらも何とか逃げ切ってみせた。もし今日のゲームをこういった展開で落とすようなことがあれば、流石に今後に悪影響が出る可能性もあった中で、しっかり逃げ切ってみせた。特に8回を任された清水の安定感が目立っていた。この3連戦、リリーフ陣は常に巨人打線に打ち込まれてしまっていたのだが、清水は、同点の8回という難しい場面を三者凡退で切り抜け、味方打線の奮起に繋げてみせた。最後の最後にマクガフも失点してしまったことを考えると、巨人打線も各打者がある程度バットが振れていたと思うのだが、その中でゲームの流れを一旦止める好投を見せた清水は大いに評価されるべきだと感じる。

打線は、いきなり3点を追いかける展開の中で、中4日で先発マウンドに上がった戸郷相手にどの程度打ち崩せるか注目していたのだが、まずは、初回にきっちり1点を返せたことが大きかった。5番に入った青木が、しっかり仕事をしてくれた。すると3回に打線が爆発した。山田のタイムリーで1点を返すと、2アウトから青木のタイムリー2ベース、オスナのタイムリーで1点差に詰め寄り、戸郷をマウンドから引き摺り下ろすと、続く長岡が代わった今村からライトスタンドに飛び込む逆転3ランホームランを放ってみせた。試合後に高津監督がコメントを残していたが、サウスポーのインコースのストレートであってもライト方向に強い打球を放てるのが長岡の長所である。こういった打撃が出来ている限りは、数字が上がってこなくても、起用し続けることが出来ると思う。今日のホームランは本当に見事な一撃だった。
その後、巨人に追い付かれ、一旦は逆転を許したのだが、7回に長岡の内野ゴロの間に同点に追い付くと、8回に「夏の神宮劇場」の主役が完璧な仕事を果たしてくれた。四球と相手エラーで1アウト1,3塁という場面で村上に打席が回ったのだが、カウント1-1からの平内の甘く入った変化球を完璧に捉えると打球は、センターバックスクリーンに飛び込む、決勝の3ランホームランとなった。今日は初回のエラーから始まり、精彩を欠いており、コンディション面で不安でもあるのかな?と感じさせるほどの出来の悪さだったのだが、最後の最後で主役の仕事を果たす辺りが村上の凄さである。

11-10というスコアが物語るように色々とあったゲームだった。まず試合の流れを引き寄せた支配下登録されたばかりの小澤の好投、乱打戦に持ち込む長岡の3ランホームラン、試合を決めた村上の3ランホームラン辺りが目立つのだが、今日は敢えて、8回に巨人打線をきっちり抑え、最終的に勝ち投手となった清水を個人的なMVPとして名前を挙げたいと思う。この3連戦は常に乱打戦という雰囲気で、今日のゲームも落ち着かない展開だったのだが、8回表をピシャリと抑えたことにより、「勝てる。」という雰囲気を作り出せたように感じる。役割的にも主役になれることは少ないし、今日も主役になった訳ではないのだが、名脇役としてしっかり逆転勝利を演出してくれた。

P.S この3連戦は、とんでもないゲームばかりでしたね。正直昨日、今日のゲームは、首位を独走するチームの試合内容ではなかったのですが、しっかり勝ち越すことが出来て良かったですよね。土日は猛暑でのデーゲームということで、現地観戦のファンの皆様もお疲れさまでした。この時期のデーゲームは中々辛いものがありますよね。ゆっくり休んでください。

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コメント

  1. 匿名 より:

    この3連戦センター方向への強い風がかなり影響していたように感じました。

  2. 超匿名 より:

     カード初戦と第二戦を見て、投手戦にだけはならない予感がしましたが、ここまでの激戦になったことは驚きでした。両チームのゲーム差を感じさせない決戦でしたね。それでもこの第三戦は通常体制の高津ヤクルト対緊急体制の原巨人という印象を受けました。
     象徴的に感じたのが七回に安打を打ち、猛打賞となった青木を交代した場面でした。あの時点ではもう一度は打順が回って来そうに思いましたが、(実際に次の回に来た)高津監督は長いシーズンという先を見据えているのかという、試合の雰囲気に飲まれず冷静だなというふうに感じました。試合後には負けていれば批判材料になっていたかとも思いました。一方ゲーム差がそうさせたのでしょう、勝ち頭の投手に中四日を強いた巨人側は、どんな形であれ勝つことが最低ラインだったでしょう。初戦をエースで大敗したことと合わせてダメージが少ない筈がありません。
     八回の場面で決勝弾を放った村上は紛れもないスーパースターですよ。この男はどこまで高みに登るか本当に楽しみです。ヤクルトファンであって良かったという報われた感を味わっています。

  3. sabo より:

    いっそ「魔の神宮球場」と呼びたいですね
    暑さや風が投手だけでなく野手のエラーもかなり呼んだかな

    1試合について言えば互角の戦いだったので勝てたのは運の要素もあるけど今後を見据えて考えると余裕を持った采配がスワローズは出来てたかな
    小澤を4イニングいかせたのも台所事情もあるけどそれ以上に単純に小澤の力を見極めるためだと感じました

    そしてスアレス抹消ですね
    ローテーション当てお遊びなのですが
    石川(30日登録可)が投げる代わりに高橋奎二(7月5日登録可)がジャイアンツ戦頭にスライドなので結局スアレス分の先発をあげないとなりません
    ファームでめぼしい先発ローテは
    ①まだファームで結果を出してない市川
    ②急いで先発調整中の星
    ③何故か2週間投げてない金久保
    (吉田大喜にいたっては6月一度も投げてない。どこへ行った?)

    経験も加味して現実味があるのはかろうじて②星でしょうか

    ④シンデレラボーイ小澤の先発起用
    を個人的に一番みたいです

  4. FIYS より:

    ーさんへ

    いわゆるホームラン風が強く吹いていましたかね?それも乱打戦になった要因の1つでしょうね。

  5. FIYS より:

    超匿名さんへ

    おそらく巨人は3連勝を狙って乗り込んだTOKYOシリーズでしたよね。戸郷の中4日などかなり攻めの采配を行っていた印象です。高津監督は10ゲーム以上差が広がっていることも踏まえた冷静な采配を行っていた印象です。

    村上は本当に頼りになりますよね。

  6. FIYS より:

    saboさんへ

    「魔の神宮球場」という言葉がぴったりハマるかもしれませんね。

    小澤先発は全く頭にありませんでしたが、4イニングを投げたということは、日曜日に先発する可能性は確かにありますよね。どんな選択をしますかね?

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