ギフト

ヤクルト8-2巨人

「ギフト(神様からの贈り物)のようなプレーヤー」という言葉を初めて聞いたのは、ラグビーの元日本代表HCエディー・ジョーンズがアマナキ・レレイ・マフィについて語っている時だった。こういう表現があるんだな。と思ったものである。その言葉を送りたい選手がヤクルトにも表れた。奥川恭伸である。初の中9日での登板で、立ち上がりから調子も良くなかったのだが、それでも7回1失点と試合を作ってみせた。この日に関しては、奥川がチームに勝利をもたらせたと言っても過言ではないと思っている。

奥川は立ち上がり、珍しくコントロールに苦しんだ。吉川にヒットで出塁を許すと松原の打席でワイルドピッチ後に死球を与え、0アウト1,2塁とピンチを広げると坂本にタイムリーを浴びてしまい、いきなり先制点を許してしまった。このままズルズルと失点を重ねてしまう危険性もあったのだが、続く岡本和をピッチャーゴロダブルプレー、亀井を三振に仕留め、この回を最少失点で乗り切ってみせた。終わってみれば、この回の傷を最小限に抑えたことが大きかった。その後も前回の阪神戦に比べるとボールのキレ、コントロールともにイマイチだと感じる場面が目立ったのだが、4回の0アウト1,2塁のピンチもハイネマンをダブルプレーに仕留めるなど無失点で切り抜けると、その後は巨人打線に付け入る隙を与えなかった。6回終了時点で球数は93球を数えていたため、7回から継投に入るものだと思っていたのだが、高津監督は7回も奥川を続投させた。その起用に応えるように奥川は7回も三者凡退で仕留め、球数も103球に留めてみせた。
味方打線がこまめに得点を重ねてはいたのだが、東京ドームの巨人戦ということで、全く安心できる展開ではなかった。どちらかと言うとジリジリした展開のように感じ、はっきり流れを掴んでいるようには感じられなかったのだが、そんな中でも奥川は自分の投球をやり切ってくれた。初めての中9日、初めての100球越えということで優勝争い真っ只中で以前に比べて負荷を掛け始めているのだが、しっかり結果を残してくれた。
今日の投球は先程も書いた通り本調子ではなく、球のバラつきも目立ったのだが、そのバラつきを逆手にとって投球を組み立てているように感じる場面もあり、投手としての引き出しの多さ、総合力の高さは、20歳の投手とは思えなかった。立ち上がりあれだけ苦しみながらも7回を103球で収め、被安打5、与四死球1の1失点でまとめてしまうのだから恐れ入ってしまう。常に投手有利のカウントを作るということは、それだけストライクゾーンでカウントを稼ぐことが出来ているということなのだが、奥川の場合は、ただストライクゾーンにボールを集めるだけでなく、ボール球を振らせることも出来ている。常に奥川が主導権を握った中で打者と対峙している姿が見られる。「支配的なピッチング」という言葉を使いたくなる投手である。
奥川恭伸は、まさに神様から贈られたギフトのような選手である。

打線は、初回、9回以外は、毎回先頭打者が出塁し、常に巨人バッテリーにプレッシャーを与え続けた。2回は西浦の犠牲フライで同点に追い付き、4回はサンタナの2ランで勝ち越し、5回は山田のソロホームランで追加点を奪ってみせた。3回のチャンスを逃し、嫌な雰囲気も漂い始めていたのだが、そこは巨人のお株を奪うような一発攻勢で得点を重ねてみせた。それでも7回までは、チャンスを貰いながら、攻めきれない印象も残り、このままだと終盤が怖いと感じるゲーム展開でもあったのだが、そんなどこか重たさも感じるような雰囲気を完全に振り払ってくれたのが、8回の塩見の一発だった。1アウト2,3塁の場面で代打川端が申告敬遠で歩かされ、1アウト満塁とチャンスが広がると、ここで塩見がカウント2-0からの甘く入ったストレートをしっかり捉え、打球は右中間スタンドに飛び込む満塁ホームランとなり、試合を決定付けてみせた。巨人の古川は、コントロールに苦しんでおり、カウント2-0からストレートでストライクを取りに来ることはある程度想定できたのだが、そこでしっかりスイングを掛けてホームランという最高の結果に導いた塩見に成長を感じた。塩見は元々高いポテンシャルを持った選手だったのだが、中々シーズンで結果を出すことが出来ていなかった。打席で迷いが見られる場面が目立ち、本来の力を発揮できない姿が数多く見られた。しかし今シーズンはレギュラーに定着し、実戦経験も積んだ中で、しっかりシチュエーションを頭に入れてプレーできるようになってきたのではないだろうか?甘いボールを逃さずに一発で仕留めた姿は、良い意味で「塩見らしくない」一発となったのだが、今後はこういった場面も少しでも増やしていってもらいたい。

奥川の好投で勝ち取った1勝により阪神とのゲーム差は2まで縮まってきた。まだ毎日一喜一憂することが出来る。10連戦のスタートを良い形で切ることが出来た。

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コメント

  1. sabo より:

    初回はバタつきましたがやはり奥川はレベルが違うと感じさせますね
    打者との駆け引きも正直駆け引きなんかしてないんじゃないかと思うくらい余裕がありますね

    打線は西浦の同点犠牲フライ、勝ち越しサンタナの2ラン、追加点山田のソロですね
    この3つが良いところにきたと思います。

    ここにきて調子が上がってきたサンタナが面白いと思うんですよね
    慣れてきたのもあるだろうし来期はもっと打つんじゃないかという気がします
    今はクリーンナップにランナーを返せるオスナを置いてますけどサンタナ5番の方が村上に勝負してもらえるんじゃないかという気持ちもあります

    オスナも好きなんですけど打てるゾーンが広すぎて釣り玉に手を出してしまうのが気になる
    一生懸命なプレーも含めて雄平を思い出してしまう(笑)

  2. FIYS より:

    saboさんへ

    奥川は確かにちょっとレベルが違うように感じますよね。

    サンタナは守備への不安があるため5番に置きづらいという部分もあると思うんですよね。オスナの状態が落ちない限りは5番起用は難しい部分もあるのかもしれませんね。

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