DHがないゲームの面白さと難しさ

日本シリーズ第3戦
ヤクルト5-4オリックス(ヤクルト2勝1敗)

私はDH制度肯定派であり、セリーグもDH制を導入するべきだと考えているのだが、今日のゲームを見て、DH制度反対派の人の気持ちも分からなくはないな。と感じた。DHがないこと、延長が12回まであることで継投のタイミングがかなり難しくなっている印象である。今日は両チームにミスも散見され、第1戦、第2戦とはまた違った雰囲気のシーソーゲームとなったのだが、最終的にはセリーグのホームゲームという強みをヤクルトが活かした形になったのではないだろうか?
今後の先発投手を考えると今日のゲームをヤクルトが落としてしまうとかなり厳しくなることが予想されただけに、今日競り合いをものに出来たことの意味は大きいと感じる。9回をマクガフで締めくくれたことも明日以降に繋がるはずである。

小川ー中村のバッテリーは、今日は緩急を使ってオリックス打線を封じにかかっている印象だった。初回からストレート、ツーシーム、カットボールというファスト系のボールにチェンジアップ、フォークを織り交ぜて、打者のタイミングを崩そうとする意図が伝わってきた。特に空振り、三振が極端に少ない吉田正をチェンジアップ、フォークで2打席連続三振に斬って取った場面は、今日の小川ー中村バッテリーの意図がよく伝わる場面だった。
3回に味方のエラーもあり、ピンチを招くと宗に先制タイムリーを浴びてしまったのだが、その後の1アウト満塁のピンチで吉田正、杉本をしっかり抑えたことで、試合の流れを完全に失うことはなかった。味方が逆転した後の6回に杉本に同点2ランを浴びてしまったため、合格点を与えるという所までは行かなかったかもしれないが、それでも6回3失点でまとめたことによって、チームが後半勝負を仕掛けられるシチュエーションは作ってくれた。先発としての最低限の働きは見せてくれた。
リリーフ陣は3-3というスコアの7回からスアレスを投入したのだが、日本シリーズ初登板の難しさもあってか、コントロールが定まらず、1アウト1,2塁のピンチを招いたところで降板となってしまった。後を継いだ田口は宗を三振に仕留め、2アウトまでこぎつけたのだが、吉田正にはスライダーを上手く拾われてしまい、これが勝ち越しタイムリー2ベースとなってしまった。田口自体は投げミスはなかったと思うのだが、このボールをヒットに出来てしまうのが吉田正の技術である。
この後、杉本を申告敬遠で歩かせ、ヤクルトは田口でモヤと勝負に出たとのだが、オリックスはここでとっておきの代打アダム・ジョーンズを起用してきた。ヤクルトベンチもここで石山にスイッチして勝負に出たのだが、その石山が素晴らしいボールを投げ込んでくれた。石山らしい糸を引くようなキレイなストレートで追い込むと、最後はフォークで三振に斬って取ってみせた。3回に先制点を奪われたシーンもそうだったのだが、その後のピンチを抑えたことで、競り合いのまま、攻撃のイニングに移れることが出来たことは大きかった。直後にサンタナに逆転2ランホームランが飛び出したため、8回清水、9回マクガフといういつもの勝ちパターン継投に移行すると思ったのだが、高津監督は8回も石山を続投させ、9回は初戦で逆転サヨナラ負けを喫したマクガフを投入してきた。今日の石山の出来を見ると8回でも場合によっては9回や延長戦の試合を締める場面での登板もあり得そうである。ここに来て石山のボールが完全に復調したように感じることは、ヤクルトブルペン陣にとって大きなことである。
そして9回を任されたマクガフは、初戦に続いて先頭打者にヒットを許してしまったため、球場全体の雰囲気が変わり始めたのだが、何とかアウトカウントを2つ重ね、2アウト3塁で吉田正を迎えることとなった。吉田正を歩かせると逆転のランナーを許すこととなり、次の打者は今日ホームランを放っている杉本だったため、ヤクルトベンチがどういった選択をするか注目されたのだが、ヤクルトベンチは吉田正を申告敬遠し、杉本勝負を選んだ。これがオーソドックスな考え方だと思う。もしかすると吉田正はまだ本調子ではないのかもしれないが、初戦からしっかりスイングをし、ボールを捉えることは出来ていたため、オリックスで最も抑えづらいバッターという評価は変わりないと思う。またマクガフと吉田正との相性ということを考えた中でも杉本勝負という選択が妥当だったと思う。
今シーズンの5月30日の交流戦でこんなゲームがあった。→「勝ち切りたかったが勝ち切れず。痛いことは痛い。
ヤクルトがオリックスに7-8で敗れたゲームなのだが、このゲームの8回、ヤクルトが1点リード、2アウト1,3塁(その後2アウト2,3塁)、打者吉田正、投手マクガフという場面で吉田正と勝負し、逆転打を許してしまったゲームである。
その時私は記事の中で「シチュエーションを考えると無理に吉田正と勝負せずに満塁で杉本との勝負を選んでも良いシチュエーションだったとは感じる。2アウト1,3塁という場面で最初から敬遠という手もあったと思うし、カウントが悪くなったところで敬遠を選択するという手もあったと思う。また1塁ランナーの宗に盗塁を許した後に敬遠する手もあったと思う。今日のゲームで続く杉本が当たっていたことも頭にあったのかもしれないが、吉田正はパリーグきっての打ち取りづらい打者であるため、杉本勝負という選択肢は考えても良かったかな?という気持ちが残っている。」ということを書かせてもらった。
今日の9回表の場面も似たようなシチュエーションだったのだが、今日は吉田正を歩かせ、杉本で勝負をする選択をした。もちろん結果はどうなるか分からないのだが、私は今日のヤクルトベンチの選択を支持する。それ程までに吉田正という打者は打ち取りづらい打者である。
杉本と勝負した結果、マクガフがインコースのストレートで詰まらせ、ファーストゴロに打ち取り、ゲームを締めくくってくれた。マクガフはメンタル的にもきつかったと思うのだが、本当に良く投げてくれている。ボール自体はそれ程悪くないと感じるため、明日以降はフラットな状態で準備することが出来るのではないだろうか?

打線は、今日も序盤は得点が奪えず、何となく重苦しいムードで試合が推移していった。とは言っても、山本、宮城の時とは違い、田嶋のボールは荒れており、そこまで調子が良いとも感じなかった。しかし4回2アウトからオスナが2ベースを放つまではノーヒットに抑え込まれてしまっていたのも事実である。小川が最少失点に抑えてくれていたため、試合の緊張感は保たれていたのだが、そんな展開の中で、オリックスベンチが難しい決断を迫られることとなった。
5回に1アウトから青木がヒットで出塁した場面で、オリックスベンチは田嶋を諦め、比嘉にスイッチしてきた。田嶋の投球内容、球数を考えるとあり得るスイッチではあったのだが、オリックスベンチの本音としては、この回だけでも投げ切ってもらいたいというものがあったのではないだろうか?山田は比嘉の前にショートゴロに倒れてしまい、2アウト2塁とシチュエーションが変わったのだが、ここでオリックスベンチは投手を比嘉からバルガスにスイッチしてきた。この継投は正直意外だった。1アウト1塁、打者山田の場面で敢えて比嘉をぶつけたということは、オリックスはこの回に1点も失いたくないという思いがあったはずである。それであれば、村上を歩かせて、そのままサンタナに比嘉をぶつけるのがセオリーだと思うのだが、オリックスベンチはそうしなかった。ここに付け込むように村上、サンタナがバルガスから四球を選び、2アウト満塁までチャンスを広げると、ここで中村がバルガスの変化球をセンターへ弾き返す、逆転2点タイムリーヒットを放ってみせた。その後のプレーでの宗の悪送球も重なり、一挙に3点を奪うことに成功した。オリックスベンチの継投の迷いに付け込むような逆転劇は明日以降のゲームにも影響が出てきそうである。
この3点で逃げ切れれば良かったのだが、その後再度リードを奪われてしまい、嫌なムードになりかけたのだが、直後の7回に大仕事をしてくれたのは、サンタナだった。オリックスはこの回から吉田凌を投入したのだが、先頭の青木がヒットを放ち、チャンスを作ってみせた。しかし山田はライトフライ、村上は三振に倒れ、一度はチャンスが萎みかけた。吉田凌の縦スライダーは独特であり、このシリーズでも威力を発揮していた。タイプ的にサンタナは相性が悪いかな?とも思っていたのだが、カウント2-0からのスライダーを強く叩くと打球は右中間スタンドに飛び込む、逆転2ランホームランとなった。カウントを考えると吉田凌の投げたボールも失投ではなかったと思うのだが、ストライクが欲しいバッテリーの心理も頭に入れた中で一振りで仕留めた見事なホームランとなった。山田、村上が打ち取られた後に飛び出したホームランということで相手にダメージを与える値千金の一発となった。
村上の後ろのバッターというのは、どうしてもプレッシャーの掛かるシチュエーションで打席に入ることが多く、サンタナも今シリーズはここまでノーヒットと抑え込まれていたのだが、大事な場面で大きな仕事をしてくれた。

今日のゲームは、エラーや四球、采配の迷いなど第1戦、2戦に比べればミスも目立ったゲームなのだが、両ベンチの駆け引きは非常に面白かった。「野球」というスポーツのゲーム的な面白さが感じられる一戦となった。こういうゲームも確かに面白い。DH制があるかないかだけでも「野球」というゲームの顔は大きく変わってくる。

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