昨年の大会の振り返り記事にも書いたのだが、カーボンシューズの登場以降、長距離界の記録は向上し続けている。箱根駅伝も例外ではない。各区間のタイムは、これまでの常識とはかけ離れたタイムが続出するようになり、今大会の青山学院大の総合優勝の記録は、10時間37分34秒とついに10時間40分を切る記録に到達した。オールドファンとしては、これまでの記録や常識というものを一旦頭から離してレースを見守る必要が出てきている。しかし、レース展開自体は、大きくは変わっていないと感じる。今大会に関しては、黒田朝日という「シン・山の神」の出現という大きなインパクトランナーが登場したのだが、結果としては、往路で主導権を握ったチームがそのアドバンテージを活かして逃げ切る形となった。来年の大会以降も、このトレンドは大きくは変わらないのではないだろうか?だからこそ、往路の嵐のような目まぐるしい展開が非常に面白くなっているし、復路も中継車の影響が少ないシード争いは毎年熾烈なものとなっている。
箱根駅伝の勝ち方を熟知している青山学院大の3連覇という結果で幕を閉じたのだが、来年以降この青山学院大を倒す大学は現れるのだろうか?
箱根駅伝という大会があまりにも大きくなり過ぎたという指摘もあるのだが、私自身はこの大会を大いに楽しませてもらっている。来年以降もこの壮大なドラマを見続けることになりそうである。
それでは、第102回のレースを振り返ってみたい。
事前のポイント記事はこちらから→「第102回箱根駅伝ポイント | ヤクルトファンの日記」
総合優勝 青山学院大
・戦前は五強の一角に数えられていたが、決して「大本命」という立ち位置ではなかった。しかし、大学長距離界のエースと呼んでも過言ではない黒田が5区で首位中大との3分24秒差、早大との2分12秒差をひっくり返す驚異の走りを見せると、6区以降も存分に強さを見せ付け、箱根駅伝3連覇を達成してみせた。
黒田に関しては、1年次から5区候補として名前が挙がっていたのだが、その後大学長距離界のエースへと成長し、箱根駅伝でもエース区間2区で結果を残していたため、基本的には2区に配置されると予想していたのだが、今回は5区で圧巻の走りを披露してくれた。
正直1区小河原がハイペースに潰され、区間16位スタートになった際には、「2区黒田で追い上げられないのはかなり痛手なのでは?」と感じたのだが、後方からの難しいレース展開の中でも飯田ー宇田川ー平松がしっかり自分の走りをし、順位を押し上げた所に青山学院大の真の強さを感じることが出来た。おそらく4区を走った平松は、チーム内で10番目に入るかどうかのボーダーにいる選手だと思うのだが、この平松が往路4区で快走する辺りに青山学院大のチーム内競争の激しさ、層の厚さを感じることが出来た。こういった選手の押し上げがなければいくら黒田が快走しても、総合優勝に届かなかった可能性がある。決して黒田一人のワンマンチームで優勝した訳ではない。エースやゲームチェンジャーと言われる選手の存在は必要だが、青山学院大の質の高さと量の豊富さは他の大学の追随を許さない。
原監督が作り上げた「青学メソッド」というものがしっかりチームに浸透している。箱根駅伝に合わせるピーキングの上手さ、特殊区間の適性の見抜き方、戦略の確かさ、スカウティングと育成の両立と箱根駅伝制覇に向けて必要な要素を高いレベルで持ち合わせているのが青山学院大である。選手が毎年入れ替わる学生スポーツで、これだけ注目度が高い競技において、長期間に渡ってトップの座を守り続けていることは、驚異的な事である。
今年も青山学院大の強さを再確認させられる箱根駅伝となった。
2位 國學院大
・國學院大も非常にレベルの高いレースを展開してみせた。メンバーの質の高さ、層の厚さという部分では5強の中でもトップクラスのモノを作り上げてきたと思うのだが、特殊区間のある箱根駅伝では、思うように結果を残せなかったという部分もあった。しかし、今回は5区でルーキーの高石が好走するなど、穴のない駅伝を披露し、10時間40分7秒というこれまでの総合最高記録を上回るタイムでゴールしてみせた。
1区で抜群の駆け引きを見せた中で区間新記録を叩き出した青木の走りで流れを作ると2区上原が耐え、3区野中、4区辻原も実力を証明してみせた。鬼門の5区、6区も高石、後村で流れを途絶えさすことなくリレーすると、7区高山の快走で青山学院大を多少なりとも慌てさせたのではないだろうか?飯國、野田、尾熊といった下級生も実力を発揮し、来シーズン以降に繋がる駅伝となった。出雲、全日本では優勝を狙えるチームだったのだが、今回の箱根での走りを見て、来年以降は、箱根でも優勝候補の筆頭に名前が挙がってきてもおかしくない存在になったと感じることが出来た。
前田監督が作り上げたチームは完全に実力校の仲間入りを果たしたのではないだろうか?
3位 順大
・私は事前記事で順大はシードを獲得する(9位予想)と予想していたのだが、ここまでの順位は全く予想していなかった。近年中々選手のポテンシャルを引き出すことが出来ず、力のあるランナーが入学しても、箱根での結果に結びついてこなかったのだが、今回は、10人のランナーがしっかり力を出し切ったのではないだろうか?ブレーキなく10区までしっかり襷を繋ぐことの重要性を感じさせてくれた。高校時代から世代トップクラスの力を有している吉岡、川原、玉目、永原らが20キロ以上の距離でも結果を残し始め、ルーキー井上も好走し、4年の石岡、10区の山本らも想像以上の走りを見せてくれた。各選手がポテンシャルの高さを発揮し始めたからこその3位ということになるのではないだろうか?
三浦隆司が3000m障害で世界の舞台で活躍していることも順大にとってはプラスに働きそうである。箱根に留まらず、世界で戦えるランナーの育成に努めていってもらいたい。
4位 早大
・早大に関しては、1区が大切だと思っていたのだが、ここで吉倉がほぼ満点を与えても良いような走りを披露し、流れを作ると2区山口智の快走で順位を上げ、4区のスーパールーキー鈴木は、あのY・ヴィンセントの記録にあと1秒と迫る驚異のタイムで区間賞を獲得し、あわや往路優勝という形を作ってみせた。最終的には5区黒田の快走の前に往路優勝は潰えてしまったのだが、大学に入学して以降着実に実力を付けた復路のランナーがしっかり結果を残し、総合4位に喰い込んでみせた。来年も世代トップクラスのランナーが複数人入学するなど「個」の力は確実に高まっているのだが、早大はやはり叩き上げ系のランナーに勢いがある時が強い時である。今回の復路のランナーの走りは、間違いなく今後に繋がるはずである。
山口竣、工藤、鈴木、佐々木に増子、新妻、本田が加わる来季以降は、大学長距離界のスター軍団になり得る可能性がある。
5位 中大
・私が応援する中大は、今年もスピードを強化し、そのスピードを活かした駅伝で5区途中までは首位を走ってみせた。藤原監督が目指す駅伝はある程度出来たのではないだろうか?5区に関しては、大会直前に藤原監督の言葉が少しトーンダウンしているように聞こえたため、もしかすると柴田以外の出走も考えていたのかもしれないが、今出来る最高のレース展開には持ち込めたのではないだろうか?6区並川の57分台の走りも見事だった。
今年で吉居駿恭も卒業となるのだが、厳しい見方をすれば、99回~102回の4大会はいずれも総合優勝のチャンスがあっただけにどこかで総合優勝を果たしたかったという部分はあったのではないだろうか?この4大会で勝ち切れなかったことが来年以降どう影響してくるかは分からないのだが、近い将来学生三大駅伝で優勝する姿を見てみたい。トラックと駅伝の両立というものは外から見ているよりも難しいのかもしれないが、今の中大の取り組みが駅伝でも花開くことを期待したい。前回大会と順位は一緒ではあるのだが、価値ある5位だったのではないか?
6位 駒大
・区間エントリーが発表された時からどこかにアクシデントがあったのではないか?と噂されていたのだが、復路に回った谷中、山川、佐藤のコンディションが整わなかったようである。それでも帰山、伊藤という4年生がしっかり結果を残し、繋ぎの2区になるかな?と予想した桑田が想像以上に素晴らしい走りを見せるなど、十分に見せ場は作ってみせた。4区村上が走っている最中にアクシデントがあったようでブレーキとなってしまったが、それがなければもっと上位で戦えるだけの力があったことを感じさせてくれた。
将来、世界の舞台で戦ってもらいたい山川や佐藤が「箱根駅伝」という大きな舞台のために無理をしなければならなかったことは、もしかすると箱根駅伝の功罪の「罪」の部分になるのかもしれないが、是非箱根の経験をこれからの陸上人生に活かしていってもらいたい。
駒大も青学大同様、長年に渡って骨太なチームを作り続けている素晴らしい大学である。
7位 城西大
・二枚看板の2区キムタイ、5区斎藤がしっかり結果を残してみせた。キムタイの2区での冷静な走りでの区間新記録での区間賞は見事だったし、斎藤も黒田に付き合わず、自分のペースを守った中で山を攻略した姿は見事だった。前回大会9区で区間賞を獲得した桜井が4区で苦戦した部分はあったのだが、これだけの走りを披露しても往路5位にとどまってしまうところに、昨今の箱根駅伝のレベルの高さを感じることが出来た。
しかし、城西大としてはほぼ理想的なレース展開に持ち込むことが出来たのではないだろうか?復路の3,4年生も常にシード圏内で冷静な走りを披露し、総合7位に貢献してみせた。3区で奮闘した小林が来シーズン以降エース候補として名前が挙がってきそうである。
8位 創価大
・創価大は、実力的にもレースの流れ的ももう少しタイムを縮めたかったという部分があるのではないだろうか?2区ムチーニ、3区織橋である程度の流れは作ったと思うのだが、日本人エースと言っても差し支えない山口が4区で不発に終わってしまった。6区小池の56分台で区間賞で再度勢いを付けたかったが、7区以降が区間2桁に沈んでしまい、攻めの走りが出来なかった。よい流れを作れそうで作れなかったという意味では、勿体ない駅伝となってしまった。それでもしっかりシードを獲得した辺りに、チーム力を感じることが出来た。来年はトップ5入りを狙いたい所だろう。
9位 帝京大
・個人的に戦前非常に高く評価していた帝京大は、1区原、2区楠岡の連続ブレーキでレースから完全に取り残される形になってしまった。ハイペースについていった中で失速してしまった原も痛かったのだが、エース楠岡が序盤からペースが上がらず、71分50秒というタイムで区間最下位に終わってしまったことは衝撃的だった。
しかし、ここから「世界一諦めの悪チーム」の本領を発揮することとなった。もう一人のエース島田が、最下位一人旅という状況下で区間5位の走りを見せると、ここから10区まで全員が区間8位以内にまとめる走りを披露し、総合9位まで順位を上げてみせた。この展開でここまで巻き返せるのは、今大会では優勝した青山学院大か帝京大のどちらかしか成し得なかったのではないだろうか?気持ちが切れてもおかしくなく、レース展開的にも実力を発揮し辛い環境下でここまでの走りが出来るということは、並大抵のことではない。記憶に残るシード獲得となった。
10位 日大
・古豪日大は、新監督就任以前は、チームが迷走してしまい、箱根路に戻ってくることも容易ではないようなチーム状態に陥っていたのだが、その後一歩一歩チーム力を高め、箱根で戦えるチームに仕上げて来ていた。今シーズンは個々人のトラック、ロードでのタイムが向上し、展開によってはシード獲得もあり得るかな?という状況ではあったのだが、超高速化が進んだ箱根駅伝でよくぞ10位に入って来たと感じた。大砲キプケメイの好走を活かした部分が大きかったのだが、それでも5人の4年生の力走は感動的なものがあった。どん底のチーム状態で入学したであろう4年生が箱根のシードを獲得することに大きく貢献した姿に表に出て来ない部分まで想像を掻き立てることができた。区間順位はそれほど高くなくてもよく粘ってくれていたのではないだろうか?
11位 中央学院大
・1区にエース近田を投入し、2区市川もレースの流れを維持する中で最後までシード争いをしてみせた。予選会トップ通過は伊達ではなかった。
12位 東海大
・2区花岡が実力を出し切れなかったり、6区のブレーキはあったが、各ランナーが安定していた。この流れを来季へ繋げたい。
13位 神奈川大
・往路で踏ん張り、想像以上に良いレースが出来ているように感じた。帝京大のように上級生になったときに箱根で戦えるランナーを作っていきたい。
14位 東洋大
・1区松井が好走した時には、今年も粘り強くシードを獲得するのかな?という期待もあったのだが、実力者岸本が使えず、2区西村、5区宮崎も苦戦した中でシード落ちとなってしまった。来シーズン以降、チームを作り直していくことになりそうである。
15位 日体大
・平島ー田島ー荻野ー山崎ー浦上と組んだ往路で16位に沈んでしまったことが全てだった。しかし思った以上に復路は戦えていた印象もある。来季以降平島、田島、山崎の穴を埋められるだろうか?
16位 東京国際大
・1区小柴が出遅れてしまい、エティーリも足に痛みがあったようで、実力を発揮するには至らなかった。こうなってしまうと厳しいチームである。層を厚くしていきたい。
17位 山梨学院大
・良い流れを作れていただけにエース候補である4区阿部のブレーキが痛かった。このブレーキがなければシード権争いにもっと絡めたのではないだろうか?
18位 東京農業大
・4区までは、ほぼ100点のレースをしてくれたのではないだろうか?大エース前田も2区で奮闘してくれた。前田が4年生となる来年も是非箱根路に戻ってきてもらいたい。
19位 大東文化大
・個人的には、シード権を獲得すると予想していたため、ここまで失速してしまったのは予想外だった。実力者である大濱、棟方でもう少し上位に付けたかった。最後まで流れに乗ることが出来なかった。
20位 立大
・予選会を欠場した馬場は、2区に投入されたが、レース展開的にも苦しい走りになってしまった。来年以降が踏ん張りどころである。もう一度チームを立て直せるだろうか?
OP 関東学生連合
・16位相当のタイムで走り切ってみせた。1区川崎(筑波大)、7区秋吉(東大)が実力を如何なく発揮してくれた。個人的には、各区間の個人タイムは正式タイムとして残しても良いと感じるのだが、来年以降どうなるだろう。
事前記事に上げていたポイントについて
①往路の主導権争い
・1区からハイペースになり、青木(国学院大)や松井(東洋大)の揺さぶりもあるなど目まぐるしく展開が変わり、ハイペースで進んでいく往路は、今年も見応え十分だった。最終的には5区で黒田が全てを持っていったが、やはり往路で主導権を握ることは重要である。この展開は今後の箱根駅伝でも続いていくはずである。
②5区、6区の合計タイムと順位
5区6区合計タイムの順位
1位 青山学院大→総合順位1位
2位 早大→総合順位4位
3位 創価大→総合順位8位
4位 城西大→総合順位7位
5位 駒大→総合順位6位
6位 國學院大→総合順位2位
7位 順大→総合順位3位
8位 中大→総合順位5位
9位 帝京大→総合順位9位
10位 日大→総合順位10位
・5区6区の合計タイム1位の青山学院大がこの貯金を活かして総合優勝、5区、6区の上位10校がそのままシード権を獲得する結果となった。やはり「山を制する者は箱根を制す」ということなのだろうか?
③10区の役割
・折田(青学大)、佐藤(駒大)が起用されるなど、今後も10区の重要度は高まってくる可能性がある。少しでも良い順位でゴールに飛び込むための人選が為されていきそうである。
今年は、久々に往路、復路ともにテレビ観戦することが出来、Xでも大量にポストをしてしまいました。来年も大いにこの大会を楽しみたいと思う。
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