村田諒太のリベンジマッチ

7月12日(金)、エディオンアリーナ大阪で『WBA世界ミドル級タイトルマッチ』が行われ、挑戦者で同級3位の村田諒太(33=帝拳)が王者のロブ・ブラント(28=米) を2回2分34秒、TKOで下し、ベルト奪還に成功した。
(イーファイト引用)

久しぶりに村田の記事を書きたいと思う。
過去記事はこちらから→「村田諒太の世界戦は惜敗

エンダムとの第1戦以降何となくだが村田の記事は書いてこなかった。アマチュア時代からの村田の代名詞であるハードパンチはプロでも十分通用するところを見せてくれていたのだが、ヘッドギアを着用しないで戦うプロのリングはそれだけディフェンスに神経を尖らせなければならない部分もあるし、世界戦の12ラウンドという長丁場を戦うだけのスタミナ、戦略も必要になってくる。そんな中でここ数試合は「非常に慎重なボクシングを行なっているな。」という印象があった。

前回のブラント戦は、その後のビッグマッチを視野に入れた大事な一戦だったのだが、ブラントのフットワークとハンドスピードの前に成す術なく完敗を喫してしまった。ミドル級という階級の世界的な層の厚さを思い知ることとなった。村田のこれからのボクシング人生を考えると現役を続けるのであれば、このブラントにリベンジを果たす以外道は拓けて来ない状況にあったと思われる。そして敗北から9ヶ月、今度はホーム日本でブラントと対戦することになった。
9ヶ月前の対戦がブラントに終始ペースを握られての完敗だっただけに、正直村田が勝利する画を描く事が出来なかった。1ラウンド序盤からブラントがスピード豊かなボクシングを見せていたため、「やはり今日も厳しいな。」と感じたのだが、この日の村田は、前回のブラント戦での敗北からブラント対策を相当練っていたのではないだろうか?披弾覚悟で手を出し、1ラウンド後半には何発かブラントからクリーンヒットを奪ってみせた。この辺りは前回の対戦ではほとんど見ることが出来ない場面だっただけに、「おっ」と感じさせてくれた。しかしブラントのパンチもヒットしており、1ラウンドが終了した地点で村田の顔が腫れてきているのも気になった。
2ラウンドに入っても村田のパンチがブラントに入るかどうか?という部分を注目して見ていたのだが、2ラウンドに入っても村田のパンチはしっかりブラントを捉えていた。左右のボディーで相手の意識を下に向けてからの右ストレートなどはアマチュア時代からの村田のお得意のパターンなのだが、この日はプロの舞台でもその頃の村田を思い出させてくれるようなボクシングを展開してくれた。右フックでダウンを取るとダメージが見えるブラントに対して一気に追撃し、2回2分34秒でTKO勝利を収めてみせた。

プロに入ってからの村田の試合を全て見ている訳ではないのだが、私の中ではこの日のボクシングこそが村田のプロでの「ベストバウト」だと感じた。多少の被弾は覚悟しながら自分の長所である左右のボディーと右ストレートを打ち込む作戦は口で言うほど簡単ではないはずである。あれだけのスピードがあるブラントを2ラウンドで捕まえたのだから大したものである。プロに入って築き上げてきた物をもう一度見直し、アマ時代の自分の姿を取り戻したようなKO劇は、村田陣営にとってもハイリスクの戦法だったはずである。逆にブラントの強打を浴びて、追い込まれる可能性もあったし、終盤までスタミナが続くかどうか?という部分での不安もあったはずである。それでも勝つためにハイリスクな戦術を遂行し、しっかりTKO勝利に繋げたのだから凄いことである。エンダムにしてもブラントにしても現時点ではミドル級の超一流と呼ばれる存在ではないのだが、それでも層の厚いミドル級のトップに君臨する強豪である。その強豪相手にこれだけのボクシングが出来る日本人はこれまでに皆無だったのである。そんな世界の壁を突破してくれた村田には大きな賛辞を送りたい。もちろん今のボクシング界は「ベルトを獲ればすなわち世界で一番強い男」という構図ではないため、この日以上のビッグマッチで勝利して初めて「快挙」と呼べる部分もあるのだが、それでも村田が成し遂げたことは並大抵のことではないし、日本人ボクサーに勇気を与える勝利だったことは間違いない。この日の村田の姿には私自身強く惹かれるものがあった。

P.S 内山ーコラレスの時にも感じたのだが、どれだけ強打を持っていてもあまりにスピード差が大きければ、パンチ力の差はそこまでのアドバンテージにはならないと感じていた。内山がコラレスに2度敗北してしまったように、村田もブラントに圧倒されてしまうのでは?という気持ちを持っていた。しかしそれをあっさり覆してくれるのだから、流石五輪の金メダリストである。凄い物を見させてもらった。

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コメント

  1. タラちゃん より:

    ボクシングは門外漢なんでアレですが、
    リベンジマッチではっきりした形での決着素晴らしいです。

    防衛戦って、
    チャンピオンと戦う試合よりも難しいって聞きますし、
    何とか勝ってほしい。

    この結果にホっとしたのは、
    ボクシングの世界戦をいち早く撤退したフジテレビでしょうね。

    もし負けていたら村田は引退もしくは価値が大幅に下がってしまっていたでしょうし、
    ここまでいろいろと投資していたでしょうし、ホっとしているでしょうね。
    帝拳ジムに移籍途中したのですよね。
    浜田剛史としとったなと。
    帝拳ジムだと日テレ、共栄はTBS、ヨネクラはテレ朝のイメージですが、今はそういうのもなくなったのか?村田は特別なのか?どうなんですかね?

    あと、拳四朗(漢字あってるかな?)、
    6度目の防衛でしたっけ?
    もっと注目浴びてほしいし、村田のバーターみたくなっているのよね。
    ジャンクSPORTSとかでもっとアピールしてほしいものね。

    でも、
    人気ある、テレビ中継ある村田、井上、井岡にはもっと引っ張っていってほしいね。

  2. FIYS より:

    > タラちゃんさんへ

    世界的に層が厚いミドル級でこれだけ戦えている事が凄いことですよね。今はチャンピオンが乱立している時代なので、今後は「誰と対戦するか?」という部分が興味深いですね。

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