第97回高校野球選手権大会振り返り

第97回高校野球選手権大会の振り返り記事を書きたいと思う。
第97回高校野球選手権大会注目選手」も合せて読んでみて下さい。

今大会は清宮、オコエといういわゆるキャラの立った選手の活躍もあり、非常に盛り上がった大会となった。決勝戦も前評判の高かった東海大相模と仙台育英の好勝負だった。面白い大会だったと思う。
さて今回も事前の注目選手の記事で挙げた選手も含めて気になった選手を数名上げていきたい。

投手では優勝した東海大相模の左右の2枚看板をまずは取り上げてみたい。
小笠原慎之介(東海大相模)に関しては、初戦で151キロのストレートを披露するなど、「プロ注」の名に恥じない投球を披露してくれた。いかにも体幹が強そうながっちりした体形から投げ込まれるボールは素晴らしかった。高校生にしては身体作りがしっかり出来ており、高校生とは思えない雰囲気をまとっていた。大学時代の藤岡貴裕(ロッテ)のような安定感を感じた。それでも高井雄平、辻内崇伸、菊池雄星という高校時代に150キロを記録したサウスポーと比べると迫力という意味では少し劣るかな?と感じたのも事実である。しかしこれだけの高校生は中々いないだけにドラフト上位候補として名前が上がってきそうである。即戦力という訳にはいかないと思うのだが、将来が楽しみな投手である。
吉田凌(東海大相模)に関しては、昨年甲子園で見た時に比べてストレートのキレが落ちてしまっていたことが残念だった。それでも試合を作れる所に投手としての総合力の高さを感じたし、縦のスライダーはやはり超高校級のボールだった。プロ志望届を出すとの報道もあるので、甲子園が終了したこれからの過ごし方が大事になってきそうである。ドラフト年に調子を崩すと指名しづらいのだが、あの縦スラは魅力的である。

センバツ優勝投手の平沼翔太(敦賀気比)も昨夏や今センバツに比べて調子が上がらない中での投球となってしまった。それでも調子の悪い中で試合巧者明徳義塾相手にしっかりゲームを作る辺りに吉田同様投手としての総合力の高さを感じた。ストレートのボリューム感がもう少し出てきてほしいのだが、スライダー、チェンジアップはいいものを持っていると思う。調子を落としているのは気になるが、この平沼もドラフトで指名される可能性が高いのではないだろうか?野手としての評価も高いが個人的には投手平沼に期待している。

「東北のドクターK」という異名に恥じない投球を見せてくれたのが、成田翔(秋田商)だった。やはり「石川2世」というよりも現巨人の田口麗人や現楽天の松井裕樹タイプのサウスポーだった。小柄ながら角度のあるストレートとスライダーを投げ込み、初戦の龍谷戦では16奪三振という数字を残してみせた。力投型タイプでスタミナなどにも課題がありそうだが、強気の投球に精神面の強さも感じさせてくれた。今後の成長が楽しみな投手である。

2年生サウスポーの比屋根雅也(興南)、堀瑞輝(広島新庄)も持ち味は発揮してくれた。比屋根はトルネード気味のフォームから極端なインステップで投げ込むという変則的な投法なのだが、打者からすると嫌な球筋なのではないだろうか?左バッターだけでなく右バッターもインコースのストレートにかなり手を焼いているように映った。このまま身体が出来てきて球速が上がって来ると今以上に厄介な投手になりそうである。
堀も足を吊るアクシデントもあったのだが、キレのいいボールを投げ込み、初戦の霞ヶ浦戦は完投して見せた。ランナーを出してからも粘りの投球を見せてくれた。比屋根同様身体が出来上がってくればもっと打ちづらい投手になりそうである。

もう1人名前を上げさせてもらった伊勢大夢(九州学院)は、センバツ同様初戦で打ち込まれてしまった。シュート気味に入って来るストレートを上手く操れるようになれば面白い投手になれると思うのだが、全国の舞台では結果が残せなかった。それでもしなやかな腕の振りもあり、これからが楽しみな投手に違いはない。個人的には追いかけてみたい投手である。

名前を上げていなかった選手の中では高橋樹也(花巻東)の完成度の高い投球が印象に残った。右バッターのインコースに食い込むいわゆるクロスファイヤーのストレートが素晴らしく変化球もしっかりコントロールできていた。古い話になってしまうが、現DeNAの高橋尚成の修徳高校時代を思い出した。上記の小笠原ほどのストレートはないのだが、緩急とコントロールで勝負できる高橋もプロに近い存在なのではないだろうか?
準優勝投手となった佐藤世那(仙台育英)はもっさりとした雰囲気といわゆるアーム式の腕の振りが個人的には好みではないのだが、力強いストレートと決め球のフォークという武器があり、投球パターンが確立されていた。インタビューの受け答えでは頭の回転の早さも感じさせてくれた。個人的には、準決勝の早稲田実業戦での2アウト満塁バッター加藤の場面での2塁への牽制球は今大会№1のビッグプレーだったと感じている。

野手ではやはり最初に清宮幸太郎(早稲田実業)の名前を上げない訳にはいかないだろう。大会前から注目を浴びていたのだが、5試合全てでヒットを放つなど19打数9安打2ホームラン8打点、打率.474と1年生とは思えない数字を叩き出してみせた。2本のホームランも素晴らしい弾道のホームランだったし、左中間フェンス直撃の打球も放ってみせた。安定感のあるフォームから柔らかいスイングで飛距離を出すという天性の長距離砲の実力を如何なく発揮してくれた。今後も「清宮フィーバー」は続くのだろうか?

もう1人一気に知名度を上げたのが、オコエ瑠偉(関東一)だった。躍動感あふれる走塁と守備は見るものをワクワクさせてくれた。身体能力の高い選手はそれだけで魅力的である。このオコエも身体の動きが素晴らしい。バッティングにはまだまだ粗がありそうだが、ドラフトにかかることは間違いなさそうである。準々決勝で比屋根のベストボールをホームランにしたシーンは今大会の印象に残る場面の一つだった。おそらくあの場面はインコースストレート一本に絞りそれ以外のボールが来たら「ごめんなさい」という割り切りがあったと思う。この辺のメンタルもいいものを持っていそうである。ドラフト上位指名を検討するチームもありそうである。

船曳海(天理)、根来祥汰(滝川第二)は目立った活躍はなかったが、実力の片鱗は見せつけてくれた。船曳は初戦で創成館の変則サウスポー藤崎に苦しんでしまったが、身体能力の高さは見せてくれた。また守備では思い切ったトリックプレーを見せるなど貪欲な部分も見せてくれた。大学進学予定とのことだが、今後が楽しみである。
根来は初戦の中越戦で3安打猛打賞と奮起してくれた。2回戦の仙台育英戦含めて盗塁が決められなかったのは残念だったが、スピードがあることはそれだけで武器である。社会人野球に進むようだが、こちらも身体が出来上がってくると面白い選手になるかもしれない。

その他の選手では下級生時から評判の高かった平沢大河(仙台育英)、山本武白志(九州国際大付属)がともに3ホームランを放ち存在感を見せつけてくれた。
平沢は、三拍子揃ったまとまったプレーヤーだとは感じていたが、センバツでも今夏の予選でも数字を残せず苦しんでいた。しかし今大会では長打力も見せ付け、評価を上げてみせた。スイングが早くて力強かった。守備は元々上手く、プロの世界でも遊撃手として期待できる選手に映った。
山本は昨年は東海大四の西嶋の前に完璧に抑え込まれてしまったのだが、今大会は自慢の長打力を見せつけてくれた。どっしりとしたフォームはいかにも打ちそうな雰囲気を醸し出していた。守備走塁に見るべきものがなく、プロに入るとしたら時間が掛かるタイプだと思うのだが、育成に自信のあるチームは指名に踏み切るかもしれない。監督は元ヤクルトの楠城祐介選手のお父さんですよね?一応そういった意味ではヤクルトともつながりのある選手である。

もう1人上げたいのが杉崎成輝(東海大相模)である。高校生らしいハツラツとしたプレーが印象に残った。勝負強いバッティング、機敏な守備、走塁は現広島の田中広輔の高校時代を彷彿とさせた。高校生レベルでは中々抑え込めない打者に感じた。

プロの世界に入って即戦力になりそうな選手はいなかったが、やはり日本の高校野球の人材の豊富さは凄まじいものがある。今大会も将来が楽しみな選手は山ほどいたのではないだろうか?

また今年はこの後U-18ワールドカップも開催される。今夏の甲子園に出られなかった選手の中にも高橋純平(県岐阜商)、森下暢仁(大分商)、勝俣翔貴(東海大菅生)、宇草孔基(常総学院)と楽しみな選手が選ばれている。こちらの大会も要注目である。

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コメント

  1. trefoglinefan より:

     本当楽しみです。舩曵も選ばれましたね。本当に進学なのでしょうか。宇草は出場するも進学が固いようで残念です。本当は黒瀬の木のバットを見たかったです。木製バット向きだと言われていましたから。
     何だかんだで平沢は素晴らしかったですね。ヤクルトがいち早く獲得の検討を始めたと報道がありましたが、本物かと思います。毎年外れで詰まらない投手を指名するくらいなら、平沢を1位指名してくれた方が余程希望が持てますね。

  2. FIYS より:

    > trefoglinefanさんへ

    確かに木製バットでどのようなプレーを見せるかは楽しみですよね。

    平沢はセンバツまでは、前評判の割にはあまり印象に残らなかったのですが、今回は素晴らしいプレーを見せてくれましたね。守備が安定しているのが魅力的ですよね。 

  3. trefoglinefan より:

     宇草は県の予選で負けた時点で進学を打ち出していましたが、成田は就職、森下と舩曵、杉崎はどうも進学のようです。大変残念です。

  4. FIYS より:

    > trefoglinefanさんへ

    そうですね。各々考えた中での結論かと思いますので、今後の成長を楽しみにしたいと思います。森下はまだまだ線が細いですが、プロ志望届を出せば1位で消る可能性もありますかね?

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