ヤクルト5-2阪神
今日の石川については、個人的には「崖っぷち」の中での登板という捉えをしていた。前回の広島戦は、序盤から滅多打ちにあってしまい、全く試合を作ることが出来なかった。前々回の阪神戦では、勝ち投手になってはいたが、決して良い内容の投球ではなく、もし今日の登板で前回のような投球になってしまうと、次のチャンスがいつ巡って来るか分からないような状況に追い込まれる可能性があると思っていた。そしてチームも主力の離脱が相次ぐ中で「どうすれば勝てるのか?」というようなチーム状況に追い込まれていた。
今日は45歳の石川とルーキー伊原のマッチアップということで、何とか勝利を手にしてもらいたいと願ってはいたが、その実「厳しい展開になるだろうな。」とは予想していた。そんな予想を覆すような粘りの投球を見せてくれたのが石川だった。チームも自身も追い込まれた中で完全アウェーの甲子園でこれだけの投球を披露し、チームの連敗を3で止め、自身の勝ち星を188勝に伸ばすのだから驚いてしまう。石川を語る時「巧さ」という表現を使うことが多いのだが、内面の「強さ」があることを忘れてはならない。
今日の石川の投球はいつにも増して丁寧だった。ファストボール系のストレート、シュート、カットボール、球速帯の遅い、シンカー、チェンジアップ、カーブを内外角関わらず、とにかく低めに集め続けた。広い甲子園球場を活かした配球で阪神打線に決定打を許さなかった。これだけの球種を内外角の低めに投げ分けられる技術の高さは、石川ならではである。4回に森下に浴びた同点ソロホームランに関しては、打った森下を褒める他ないだろ。インコース低めに投げ切ったカーブを完璧なタイミングで捉えられてしまった。時にはこういった一球で冷静を失ってしまうことがある石川なのだが、今日は、そういった脆さを見せることもなく、後続をしっかり抑えると、5回、6回も走者を許しながらも無失点で切り抜けてみせた。結局石川は、6回で103球を投げ、被安打6(被本塁打1)、与四球2の1失点で阪神打線を抑え込んでみせた。近年の石川は、1つのアウトを奪うのに費やす球数が増えている印象があり、今日の6回103球というスタッツからも相手打者を抑えることが年々難しくなっていることを感じるのだが、それでもきっちり試合を作るところにベテラン投手の味を感じさせてくれる。己の変化、衰えというものと向き合いながら、投球に工夫を加えて、勝負する姿はプロフェッショナルの姿そのものである。
そんな石川の好投に打線が応えたのは、7回表の攻撃だった。1アウトから古賀が四球、岩田がヒットで1アウト1,2塁のチャンスを作ると、ここで石川の代打として起用された増田が、センターオーバーの勝ち越し2点タイムリー3ベースを放ってみせた。前回石川が甲子園で勝ち投手になった時にも代打でタイムリーヒットを放った増田が今日もサウスポー伊原相手に大仕事をしてくれた。多少疲れが見え始めていたとは言え、キレの良いボールを投げ込む伊原のインコースへのストレートを力強く弾き返してみせた。この集中力、左投手への対応力は大きな武器となる。
この後相手のミスもあり、もう1点を追加し、石川に勝ち投手の権利が残った中で7回裏以降の後半戦に突入することとなった。
石川の勝利がかかった中での終盤3イニングというものは、ファンにとってはとにかく長く感じるものである。今日は、今のヤクルトの勝ちパターンである木澤ー荘司ー石山のリレーとなったのだが、木澤が阪神の下位打線相手にピンチを招き、上位打線に繋がるという非常に嫌な場面を作ってしまったのだが、ここを中野の内野ゴロの間に失った1失点のみと凌ぐと、8回はルーキー荘司が、佐藤輝、大山、前川のスラッガー3人を三者凡退に斬って取り、阪神に流れを渡さなかった。8回の荘司の出来の良さは素晴らしいものがあった。ここの所捉えられる場面が増え、心配していたのだが、プレッシャーの掛かる場面、ましてや甲子園での阪神戦でこれだけ完璧な投球を披露できるというのは、やはり並大抵のルーキーではない。勝利を大きく手繰り寄せる8回裏になったのではないだろうか?
9回表にオスナのタイムリーで貴重な1点を追加すると、最後は石山がランナーを許しながらも最後は中のをショートライナーに打ち取り、5-2で逃げ切ってみせた。
今日のシチュエーションでしっかり先発の役割を果たして、188勝目を手にした石川は流石に経験値の高いベテラン投手である。しかし勝ち星というものは、決して投手だけの力で掴めるものではない。野手陣の奮起、リリーフ投手の踏ん張り含め、チームで掴んだ1勝である。明日以降も目の前の1試合1試合を丁寧に戦ってもらいたい。今日の石川の投球のように…。
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コメント
現在のチームの戦力では石川に勝たせるのは至難の技とまで思っていました。勝利投手となった石川自身はもちろんのこと、その権利を守ったチーム全員に拍手を送りたいです。
5回ではなく6回まで投げ切った石川、得点したイニングで繋いだ岩田、タイムリーの増田、すべてが綱渡りに似たギリギリの流れだったかもしれませんが、なんと言っても、四番からの打線を12球で抑え、相手に流れを渡さなかった荘司。今日は彼に尽きます。
そして、オスナとサンタナに当たりが戻りつつあるのも良い傾向。
石川、今季2勝目おめでとう。